「人格形成」に関する悩みである、子どもの嘘
2歳後半から4歳頃にかけて、「子どもの嘘」に悩まれる家庭も少なくありません。
それまでは「離乳食の時期や好き嫌い」「夜なかなか寝ない」「オムツの外れる時期が心配」など、生活習慣の形成に関するものが中心だったのに対し、子どもの嘘というのは「人格形成」に関する悩みです。一人の人間を育てるとき、その人の根幹となる大切な部分で、両親が非常に心配するのは当然といえます。
嘘を「治す」のではなく、人格を「育てる・作る」と考える
子どもの人格形成に最も重要な時期は3~15歳の間であると考えられています。幼稚園児の嘘をつくクセをどうしたら「治せるか」と悩む方がいますが、治さなくては!と思うから、まるでよくない病気のようなイメージを抱いてしまうのではないでしょうか。
「治す」というのは、病気や怪我の治療のように「健康的な状態ではなくなっているものを、本来の状態に戻す」ことを指します。
しかし、子どもの思考習慣は、完成しているどころかようやくスタート地点にたどり着いた状態に過ぎず、人格やパーソナリティは作られ始めたばかりなのです。もともと存在しないものを「治す」という言葉では表現できません。
そのため嘘つきを「治す」のではなく、子どもが嘘をつくパターンとその理由を知り、よくない嘘の場合は正しい方向に導いて人格を「育てる、作りあげる」と考えるほうが、親としても過剰な心配をすることなく子どもの嘘に向き合えるようになると感じます。
子どもの人格を育てていくことに親が向き合うことで、お子さんの嘘にしっかりと寄り添っていけるようになります。
子どもが嘘をつくのはどんな時?
では子どもは一体どのような時に嘘をつくのでしょう。2歳頃から高校生くらいまでの子どもに見られる嘘の原因の大まかな分類(15種類)をご紹介します。
相手をだます気がない嘘
1.空想が膨らんで現実と混同してしまう
2.話をよく理解していないためおかしな回答をする
3.表現力〔語彙〕不足のためうまく意思を伝えられない
4.言葉遊び
1~4番は2歳半から4歳頃にかけてよく見られる嘘です。真実と違うことを口にしてはいますが、本人には相手をだまそうという気持ちなど微塵もありません。ですから、この場合は「嘘」だとみなして叱る必要はまったくないといえます。
創造性を養ったり、知能を育むのに必要な嘘もある
特に1番の空想の場合は、創造性を育てるのに必要なイマジネーション能力の発達を促す大切なものです。「嘘をつかないの!」などと指摘することなく「そうなんだ、へぇ~」と自然体で話を聞きます。お子さまはまだ空想と現実の狭間の世界に住んでおり、それはこの時期の子どもたちにとってとても素晴らしいことです。
2、3番も子どもには嘘をついているという自覚はありません。言語能力の未熟さから、親の目には嘘をついているように映ることがあるのです。お子さまは自分の言葉で一生懸命話しているので、耳を傾けるようにします。そして、次のような相槌を打つと効果的です。
子ども自身に「あれ、私何か間違えている?」と感じさせないよう留意しつつ、「そう、○○だったのね~」と正しい適切な表現にすりかえて、いかにも子どもの言葉を復唱したように自然にさりげなくあいづちを打つことが望ましいです。その時、子どもが「違う!△△だよ!」と先ほどと同じ表現で主張してくるようであれば、それ以上の積極的なはたらきかけはせずに、「そっか、わかったよ~」と引いてあげます。
4番の言葉遊びだと感じた場合は、知能を育む遊びにあたります。嘘を指摘せず、時間が許すならばお子さまの言葉遊びにつきあってあげるのがポイントです。
子ども自身が「嘘をついている自覚のある」嘘
5.願望が大きくなって現実と混同してしまう
6.怒られないようにとっさに出る嘘
7.自分をかばうためにつじつまを考えながらつく嘘
8.相手の気を引いて自分に注目してもらいたい
9.本当の自分の気持ちを理解してもらえないいらだち
10.根ほり葉ほり聞かれる面倒を避けるため
11.立場の強い子からの口止め
12.仲間をかばうため
13.親の期待に応えて喜ばせるため
14.ねたみや復讐
15.相手の心を傷つけないため
こちらの嘘は、子どもがより年齢を重ねていくなかで出てくる嘘です。そして5~14番までは、子ども自身も「嘘を言っている」という自覚のある本物の嘘です。これに対しては慎重な対処が必要です。この時の親の対応によって、子どもの自己肯定感は強まるか弱まるか、他人を信じることのできる子になるか、疑心暗鬼にとらわれやすい子になるかの明暗を分けてしまう可能性もあるといわれています。
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子どもの人格教育は10年以上にわたる長期戦
「子どもの嘘」は大変重要な育児テーマの一つです。子どもたちは10年以上の長い年月をかけて自分の人格を作り上げていきます。優れた人格を一言で言い表すことはできませんが、なんとなく皆が共通してイメージしているものならばたくさんあることでしょう。
「誠実」「勤勉」「節制」「寛容」「清廉」「高潔」「謙虚」など、他にも決断力や行動力などいくつもの言葉が思い浮かびます。せっかくこの世に人として生を受けた私たち、優れた人格というものは一生をかけて磨いていきたいと感じるものです。
目の前の一歩一歩を適切に歩んでいくべき
それは、30~40歳で辿りつけるようなものではなさそうです。ましてや、子どもたちに求めるのはあまりにも高すぎる要求だといえるでしょう。しかし、だからと言って歩みを進めなければ私たちはどこへも辿りつけません。千里の道・万里の道も一歩からです。私たちが子どもたちを導くべきは千里先のゴールではなく、いつか万里の道へと繋がる、目の前の適切な一歩であると考えます。
思考習慣の教育は、あらゆる学びのベースとなる
「子どもの嘘」に代表される悩みのように、人格形成のベースとなる思考習慣の教育は大変重要です。それは知能教育同様に、今後の人生であらゆる学びのベースとなる部分だからです。このベースがしっかりしていないところへ知識や技術の教育だけ積み重ねてみても、どこか不安定であり心理的に脆く、ちょっとしたきっかけで精神のバランスが崩れがちになることも少なくありません。
「子どもの人格教育上の悩み」は10年以上にわたって続く
「子どもの人格教育上の悩み」は10年以上にわたって両親のもとへ次から次へと降って湧いてきます。なぜなら3歳児がつくような嘘をつかなくなったとしても、4歳になる頃には嘘をついてしまいたくなる新しい高度な理由に遭遇するからです。4歳の嘘問題を乗り越えても、5歳になればまた新しい複雑な理由に出会います。子どもはそうやって少しずつ高度なシチュエーションに対応する能力を育てていきます。
ですから、親は3歳の時点で子どもの成長発達について悩んだり心配したりせず、それよりもこれから先、わが子がぶつかるであろう問題に対して、適切なアドバイスをしたり見守ったりすることができるよう、事前に予備知識を得て備えておくことが大切と考えます。
今回は、子どもがつく嘘の種類や、子どもの嘘についての親の気持ちのあり方を中心に、概要を説明してきました。
コラムNo.128「嘘をつかない子供に育てるために①~「嘘はいけない」の伝え方、とっさに出る嘘への対処法~」では、より具体的な子どもの嘘、特に「怒られないようにとっさに出る嘘」の対処法について説明いたします。お時間があればぜひ読んでみてくださいね。
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