前述のコラムNo.62「子どもを「しつける」とはどのようなことか?」でお伝えした効果的な8つのしつけの方法は以下になります。
- 親が生活習慣の家庭基準をはっきり示す。よき見本を見せ続ける。
- 生活習慣の基準を壊す悪習慣をおこなえないよう、環境を改造する。
- 子どもの望ましくない行動は先回りしてガードする。
- 子どもが望ましい行動をした瞬間に敏感に気づき、ほめる。
- 子どもが望ましくない行動をした時は、何事もなかったように無反応のふりをしつつ、同じ行動ができないようさりげなくガードする。
- 「走る」「登る」「いろいろ触る」など子どもの本能から生じる行動は極力妨げずにすむ環境を用意してあげる。
- 子どもに「ありがとう」を伝えられる状況に敏感になる。
- 子どもの行動に対して「私はどう感じたか」を伝える機会を増やす。
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そして、コラムNo.126「効果的なしつけの6つの方法とその効果~幼児期のしつけの具体的な方法を解説~」では、そのうち1~6までを具体的に説明いたしました。今回は7・8について紹介していきます。
7.子どもに「ありがとう」を伝えられる状況に敏感になる
7つめは、「子どもに『ありがとう』を伝えられる状況に敏感になる」です。
「ありがとう」という感謝の言葉は、ほめる事とはちょっと違います。「叱らない育児」=「ほめる育児」ではありません。「ほめること」には習慣づけを強化する効果はありますが、決してベストなしつけの方法ではないのです。
習慣作りに大切なことは、その事柄をどうやって子どもに動機づけるかです。もっともわかりやすい例えがアメとムチ。
「アメ」は報酬のモチベーション、何かできたごほうびを与えることでおこなわせようとする方法です。「ほめること」も実は報酬のモチベーションなのです。ですので、これを多用していると子どもの目的はいつしか「お母さんにほめられる事」になってしまい、「ほめられないならやらない…」というスタンスになってしまいます。
そして、「ムチ」は恐怖のモチベーション。叱ることもこれに入ります。言う事をきかないと嫌なことが起こるから言う事をきく。これも多用していると次第にムチに慣れてきてしまって、同じ程度の恐怖では言う事をきかなくなります。さらにはこれが高じると虐待を招く恐れもあります。
ほめることも叱ることも、「外部からの刺激によって、行動させる」という点において、モチベーションの分類は同じなのです。
ところが、「ありがとう」という言葉はアメでもムチでもありません。「相手が喜んでくれると自分も嬉しい」という喜び。「人の役に立つ喜び」を子どもに教えることになるのです。叱られたくないからでもなく、ほめ言葉や報酬が欲しいからでもなく、純粋に「相手が喜んでくれる顔が嬉しい」「相手を幸せにする役にたてることが嬉しい」のです。
この自分の内面から沸き起こってくるモチベーションこそが、最も強い行動の原動力、「セルフ・モチベーション」です。
8.子どもの行動に対して、『私はどう感じたか』を伝える機会を増やす
最後の8つめは「子どもの行動に対して、『私はどう感じたか』を伝える機会を増やす」です。
アルフレッド・アドラーが唱えた心理学の中に「アイ・メッセージ」「ユー・メッセージ」というものがあります。
“ユー(You)”つまり「あなた」を主語にすると指示や命令になりやすい文章も、“アイ(I)”「私」を主語にして「私はどう感じたか」を表現すると、自分が相手に何をわかって欲しいのかをまっすぐに伝えやすくなるものです。
例えば、「あなたはどうして部屋を片付けないの!」というよりも、「部屋を片付けてくれたら、きれいになってお母さんとても嬉しいわ」と言った方が相手の心に響くものです。それは大人でも子どもでも同じです。
大好きな相手が喜んでくれること、大切な人々の笑顔を自分が作ったとき、守ったとき。こういう時こそ、私たち人間は心から満足し、自分の生き様や自分という存在に喜びを感じます。そしてこの喜びこそが、「本当に相手のことを考えた、思いやりや優しさが生まれる土壌」になるのです。
お母さん、お父さんの「ありがとう」という言葉や、「アイ・メッセージ」は、お子さんの心の一番深いところに「思いやりと優しさの畑」を耕し、人間として尊く価値のある「幸せの種」を蒔いていくのです。
世の中には、「仕事で成功している」「自分の夢をかなえ、幸せをつかんだ」といわれる人々がいますが、その人々には共通して「世の中の役に立ちたい」という強い思いがあるのではないでしょうか。
「自分の叶えたい夢は誰かの笑顔につながっている」という思いや、「自分自身の内面から沸き起こるやる気」。これこそ最も強力な「セルフ・モチベーション」です。ほめるよりも、叱るよりも…、もっとも純粋な「心の奥底から沸き起こるやる気」を育てるための種こそが、両親の「ありがとう」なのです。
よりよいしつけのために実践してみてほしいこと
ぜひ、次のことを実践みてください。
1.「アイ・メッセージ」を使いましょう
子どもが望ましくない行動をとった時には「お母さんは悲しい」と伝えましょう。
今はまだ子どもが、親の望む通りの行動ができなくて構いませんし、今すぐに改善されなくていいのです。むしろ、3歳未満の子どもを大人しくさせる方が大きな間違いだといえます。いずれ必要な能力が揃った時に、お子さんは大好きなお母さんを悲しませることを決してしなくなります。
2.「ありがとうの種」を蒔きましょう
これも「アイ・メッセージ」の一つです。この時に、子どもを思い通りに動かすためのお世辞は絶対に使わないようにしましょう。子どもをおだてて支配しようとしてもいけません。成功のコツは、お母さんが「心から本心でお子さんをほめる」ことなのです。ですから、普段から家庭内生活基準や望ましい習慣を明快にしておく必要があります。そして、子どもが望ましい行動をした瞬間に、チャンスを逃さずほめるのです。
ちなみに、よい習慣を大人になった時のスタンダードとしてしっかり根付かせるためには、子供たちがある程度大きくなっても声がけを続けられるとよいですね。
例えば、子どもが朝「おはようございます」と言ってきたら、あいさつを返した後に「○○ちゃんのおはようございます、ママ大好き。明日も聞かせてね」とつけ加えたり、はみがきをしている姿を見かけたら「お!食後にきちんとはみがきしていてえらいね!」と通りすがりに声をかけたり等です。
「できて当たり前」と思ってしまったら、この声がけは出てきません。幼児期に、親が強制することによって身についたように見えていた習慣は、強制への反抗心が育つ中学・高校時代には崩れてしまいやすいものです。
しかし、「セルフ・モチベーション」に動機づけられたよい習慣は、何年たっても決して崩れません。
また、タイミングよく子どもをほめるためには、できる限り子どもの様子を丁寧に見守っていることが必要です。「手出し・口出しをせずに、愛情をこめて見守る」。これは手出し・口出しをするよりもずっと難しいことです。
人の役に立つ喜びと、本当の優しさや思いやりを育むために、お母さん、お父さんが、根気よく「ありがとうの種」を蒔き続けていきましょう。
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