ある学校のヤンチャな生徒の先生への態度の話
学校の先生達にヤンチャな子どもの評価を聞いてみると、たいてい意見は真っ二つに分かれます。一方の先生達は「いう事を聞かないどうしようもない子」「しつけが悪い、困った子」「素直じゃない心の曲がった子」だと言います。しかし、もう一方の先生達は「いや、案外言うことを聞いてくれますよ」「どうしたらよいか知らないだけで、教えるとできますよ」「かなり素直ですよ。自分の気持ちに正直な子ですね」と言います。
この矛盾は一体どこからくるのか掘り下げてみましょう。
子どもは心地良い相手には心を開く
最初のグループをAタイプ、後のグループをBタイプとして、同じ子どもが二人の先生と接する様子を観察してみますと面白いことがわかります。
子どもはA先生の前では非常に反抗的です。態度や姿勢も悪く、なんとなく睨みつけるような目をしているか、あるいは先生の方を見ようとせず顔をそむけています。これではA先生でなくても腹が立つというものです。A先生が注意してもロクに利きません。素直じゃない!と思ってしまっても仕方ないかもしれません。
しかし、同じ子どもがB先生の前では様子が変わります。
先生の話に耳を傾けますし、素直にいう事を聞こうとします。先生の言葉を聞くだけではなく、自分の考えもしっかりと話します。先生はそれを否定することなく受け止め、そしてどうしたらよいのかを子どもと一緒に考えます。こうなってくるとヤンチャっ子も本当に可愛いものです。
子どもは態度を使い分けようなどとはまったく考えていません。態度の使い分けができるような器用な子ならばA先生の前でも、形だけは先生の喜ぶ子どもを演じることでしょう。そう考えると、A先生に反抗している子どもの心は子どもらしいまっすぐさのままだと言えます。子どもの態度の差は、先生に対する好意の差です。
A先生に対して子どもは「叱られる」「禁止される」「嫌なことを言われる」という印象を強く持ち、すっかり嫌いになってしまっています。対してB先生には「話を聞いてくれる」「話すと嬉しい気持ちになる」「叱るけれど自分のことを考えてくれる」そして「先生に嫌われたくない」という思いを持っているのです。子どもが大人のいうことを聞く時は、その相手と一緒にいると「嬉しくて楽しくていい気持ちになる」と感じている時なのです。
親は、親であるだけで子どもは大好きなもの、だがそれゆえに難しい
お母さん、お父さんという存在は、ただ親であるというその事実だけで子どもにとっては最初からBグループタイプに入っています。子どもはお母さん、お父さんが大好きですし、いつだって認められたい、嫌われたくないと思っています。
しかし、子どもの「言葉」が発達してきた頃から、少しずつ子どもの態度がA先生に対するような態度に変化してくる家庭があります。もうおわかりの通り、子どもがお母さんのことを「叱られる」「禁止される」「嫌なことを言われる」相手だと認識してしまうから、そういう態度になるのです。
相手が学校の先生であれば「この先生は嫌い」と思うだけで話はおしまいですが、お母さんのことは大好きだから難しくなります。この矛盾した心理によって、子どもは自分の気持ちを押し殺して、お母さんの言いつけだけを守る状態が生じます。しかしこの心理状態が長く続くと、思春期に様々なトラブルが生じるのです。
「感化と情報のサンドイッチ」をマスターする
子どもの言葉や知能が発達し、知能年齢が大体3歳レベルに到達すると、そろそろ叱らねばならない時や禁止すべき事柄を教える時が訪れます。
しかし、ただ叱ったり禁止したりするのでは、子どもの心を無理矢理押さえつける形になり、子どもは次第にお母さんに対して距離をおくようになってきます。小学校高学年になると自宅で過ごす時間の大半を自分の部屋に閉じこもってしまう子どもが増えるのですが、これもお母さんにあれこれ言われるという心理が強く働いています。
上手な𠮟り方のコツは、まず「必要な情報を伝える」と考える
ではそういう状態を招かないよう、上手に叱るべきことや禁止すべきことを伝えるにはどうしたらよいでしょうか。
それには発想の転換が必要です。叱るのではなくて「必要な情報を伝える」と考えるのです。禁止することもやはり同様に「必要な情報を伝える」と考えることができます。
情報を伝える行為の前後を「感化でサンドイッチする」
東洋哲学の根本概念の一つに「化」という考え方があります。人を自然と育てていく力。強制するのではなく自然と人の進むべき道へ進むよう変化させることを意味しますが、その一つに「感化」という概念があります。
「感化」は人との共感を用いて、相手の心が良い方向におもむくように育てる方法です。子どもの気持ちに寄り添って褒めてあげることや、励ますことも感化だと言えます。一方的な励ましではなく、子どもと親御さんがその時に共感しあっているかがポイントです。
そして、叱りたい時というのは言い換えてみれば「子どもに適切な情報を教えたい、伝えたい時」といえますから、この情報を伝える行為の前後を感化で挟みこんでしまいます。感化のサンドイッチと考えればわかりやすいでしょう。
感化でサンドイッチすることで、子どもは反感を抱かず受け入れる
情報とはいっても「叱りたい内容」や「禁止したい内容」は子どもにとってはあまり嬉しい情報ではありません。それなのに怖い顔をして厳しく言われたら、余計に嫌になってしまいます。厳しい叱り方は相手の反感を招きます。
そして子どもが大きくなればなるほど、知能が育てば育つほど、反感は反抗を引き起こします。叱ったり禁止したりするなどの、子どもにとってありがたくない情報の大切さを子どもに理解させるためには、絶対に反感を抱かせてはなりません。
例えば、食事中にフォークを取ろうとして子どもがコップの水をこぼしてしまったとしましょう。心の中では「どうして気を付けないの!」と怒りたくなるところを、まずは子どもが何をしたかったのかや、あるいはよくできていることなどに目をむけます。
ただ口先だけで褒めると子どもはそれを敏感に察知し、全然嬉しくありません。「フォークを取ろうとしたのね。自分でするのは偉いね」など、とにかく良いところを無理矢理でも見つけます。きちんと具体的事実を褒められれば、子どもは納得します。まずは、この褒める行動が感化です。
そして子どもの心と共感し、その状態のまま、叱りたいことを情報として伝えます。子どもを責める口調にしないことが大切です。「コップのお水、こぼれちゃったね。どうしたらこぼれなかったかな?そう。先にコップをどかしてからフォークを取るんだね。それができたらもっとかっこいいよ。」という感じで、どういう行動が望ましかったのかを教えます。
それでも、これだけ優しく伝えても、おそらく子どもは明るい顔をしていないだろうと思います。自分が失敗してしまったこと。迷惑な状態を作ってしまったこと。子どもなりに気にしているのです。
自分が良くないことをしてしまったという出来事自体が気に入らなくて不機嫌になっています。ですから、最後にもうひと押し、感化で子どもを包みます。「次は先にコップをどかせるね。〇〇ちゃんは絶対できるよ。いいこだね~」といった具合に、子どもの心に寄り添った励ましの言葉をかけてあげましょう。
これまで叱られる経験が多かった子どもは、すぐにはこのサンドイッチがうまくいきません。そういう時には「まだ、うちの子は幼いんだな。嫌なことを受け止められるだけの素地が十分育っていないんだな」と判断し、その場はもう叱ることをあきらめましょう。叱るにはまだ時期が早いのです。
「感化のサンドイッチ」は大人にまで使える効果的な方法
この感化のサンドイッチは、子どもが幼稚園や小学校に上がった時に大きな力を発揮します。それどころか中学・高校でも、大人になってからでも効果は絶大なのです。この技術を完全に自分のものにできたならば、お母さんは大人社会の人づきあいにおいても、心優しい人格者として評価されるに違いありません。
「感化のサンドイッチ」=「褒める=伝える=励ます」
今回の話に登場した「感化=情報=感化」の具体的な実行法は「褒める=伝える=励ます」という流れで覚えてしまうのが良いでしょう。もっと様々に感化のサンドイッチは応用できるのですが、まずは「褒める」「励ます」が実行しやすいです。
よく「頑張れ」ということばは、言われるとかえって苦しいというようなお話しがありますが、それは子どもの回りの世界がもっともっと複雑になってきてからのことです。幼児に対しては、いくらでも「頑張れ」と言ってあげてください。小さな子どもは、頑張りすぎる前にコテン!と眠ってしまいますから、絶対に頑張りすぎるということはありません。
まとめ:「感化のサンドイッチ」を覚えて、上手に子どもに情報を伝えよう
いかがでしたでしょうか?
幼児期の子どもに限らず、耳に痛いことを伝えるとき、いかに「共感」「感化」とともに伝えることが重要かお分かりいただけたと思います。子どもを叱る必要があるときは感情的にならず、子どもにとって受け入れやすいように工夫してあげるのも子育ての重要なテクニックですね。
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