子どもに「忍耐」を強いるとストレスにならない?
先述しましたように親であれば皆、子どもに我慢を身につけさせわがままをコントロールできる人間になってほしいと感じているかと思います。しかし、あまりに「我慢!」「忍耐!」とばかり言っていては、わが子の心にストレスがたまって、それも良くないのではとジレンマに陥りがちなテーマでもあります。
ではまず先に心配ごとを払拭してしまうために「我慢を教えることが子どものストレスにならないか」について、最初に解決してしまいましょう。
子どもの心はストレスに強い
子どもの心というものは、大人よりもはるかにストレスに強いものです。
人間は初めて経験することや苦手なこと、困難なことにチャレンジする時に心臓がドキドキしたり顔が赤くなったりします。これは人間本来の自然なストレス反応の一つです。アドレナリン分泌によって普段よりも多い血液や酸素が全身に送り込まれます。ですから「エネルギーの供給・免疫力の上昇・注意力&記憶力の増強」が見られます。
幼いころから適度なストレス反応を経験することはプラス
幼いころから適度なストレス反応をしっかりと経験し「ドキドキするのは誰でも当たり前のことなんだ」と自分の経験から理解して納得することや、精神的な高揚感と充実感を体験することは心も体も強い子どもに育てるために必要不可欠なことです。
もちろん青年期以降、過度のストレス反応が長く続くことによって、神経伝達物質の分泌がうまくいかなくなり心身に不調をきたすことがあります。しかし、海馬の発達していない0~3歳児にとってストレス反応が長期化・慢性化することはまずないため、普通は乳幼児のストレスを心配する必要はまったくありません。
愛情豊かな家庭において、日常生活で遭遇する程度のストレッサー(ストレスを与える何らかの刺激のこと)は、子どもの心に深刻な傷を残す心配はまずないとの共通理解のもとに、今度は忍耐力や我慢力を育てる方法について話を進めましょう。
我慢の練習は2分間から
大多数の大人がイメージしているよりも、子どもの我慢できる時間は長くはありません。
どんな事においても人間には集中できる限界があり、与えられた課題をゆったりした気持ちでこなす時と、同じ課題量でも自分にできる最速のスピードでベストな記録を出すことを義務づけられた時とでは、疲労の程度が天と地ほども違います。
誰でも全力での努力は結構つらいものですので、慢性的におこなっているといくら子どもでもストレスに対する抵抗力が衰えてしまいます。
子どもが少し頑張れば達成できるくらいの課題設定が大事
ですから、子どもがちょっと頑張れば達成できるくらいの課題設定が大切になります。
例えるならば、高いところのものを取るイメージで普通に立つだけでは届かないけれど、思いっきり背伸びしたら届く高さをイメージしてください。必死で何回もジャンプを繰り返さなければならないような高さですと、子どもはそのうちに嫌になってしまいます。
最初は「2歳児の我慢は2分で十分」と考えましょう。たとえ小さな我慢でも子どもなりに精一杯頑張っているのだと理解することで、ご両親はほとんどの事に対してイライラしたり怒ったりしなくて済むようになります。
やらせてあげても問題ないことならば、2分間待たせるのはよい我慢の練習になります。
しかし、触ってはいけないものや与えないことを決めているものの場合は、2分以内にお子さまの手の届かないところに片付けたり、その場から離れて下さい。お子さまが我慢できそうにない時は、できるだけ早くその事がらを忘れさせてあげるように大人が工夫をしましょう。
順番の理解が我慢力を育てる
1歳代の子どもは普通ほとんど我慢ができません。なぜならば、その頃の子どもは「やってよいか・ダメか」「その行動をおこなえるか・おこなえないか」という二つに一つという認識しか理解できないからです。
もしかしたら、1歳になってすぐに我慢ができてお友達におもちゃを譲ることができたという子もいるかもしれません。しかし、それは決して我慢したわけではなく、動物的な本能に従って自分と相手の力関係を察知し、勝てそうにない相手だから自分は引いたというだけなのです。これは多くのほ乳類や鳥類にもみられる本能的な反応です。
ところが「順番」というものを理解できるようになると、1歳6か月でも本物の我慢ができるようになります。順番の理解ができていないうちは、おもちゃを自分が使おうとしたところを抑制されると子どもは「ダメ」を指示されたと感じます。グズったり怒ったり、中にはヒステリーのような態度を見せる子どももいます。
しかし、順番というものが理解できていると、お友達の番が過ぎれば自分も必ず使わせてもらえると確信しておとなしく待つことができます。まだ言葉の未熟な1~2歳児に「順番」の概念を教えるには、「毎回同じ経験」「毎回同じことば」をくり返し与えることで「順番」とはどういうものかを感覚的にとらえさせていくのがコツです。
絶対にダメなこと以外はすべて「OK」サインを示す
2歳を過ぎことばやごっこ遊びの発達が進んでくると、子どもには「いま、ここ」以外の「時間や空間の認識」が育ってきます。この認識が育ってきたら、子どもが何かを要求してきた時にそれが人として断じて許されないような事柄でなければ、まずは「いいよ」と笑顔で答えましょう。
時間的な条件をつけ加えて「我慢」のトンネルの出口を指し示す
そしてすぐに「時間的な条件」をつけ加えます。
たとえば「新幹線に乗りたい!」と言ったならば、「いいよ、夏休みに乗ろうか」といった具合です。ただ単純に「ダメ」と言われた時には子どもはなかなか我慢できません。子どもの忍耐力・我慢力を育ててあげるためには、「我慢というトンネルの出口を指し示してあげる」ことがとても大切です。
ただし、時間の観念がまだまったくできていない子どもには、「いいよ、と言ったのにやらせてくれない」という思いを抱かせるだけですから、この方法を使う適切な時期が訪れているかどうかはしっかり見極めてあげてくださいね。
我慢のレベルアップをめざす時には「アメ」の使用もアリ
ここでいうアメとは「アメとムチ」のアメです。小さい子どもにとって少し大きな我慢をするのはとても大変なことです。叱るようなことではなく、むしろできなくて当たり前で、もし我慢できたならばとても褒めてあげるべき課題なのです。そして、我慢の練習のためには「目先の報酬」として「褒める」ことや、時には「お菓子」や「おもちゃ」といったごほうびを与えてもよいでしょう。
3歳から6歳にかけて脳の前頭前野をしっかり育てていくと、6歳から9歳頃には脳の報酬系と呼ばれる回路の中で「報酬予測」という能力が適切に育ちます。簡単にいうと、「この行動をすれば、きっとこのような結果になるだろう」と推測する力です。
この報酬予測の力が育つまでは、子どもは理屈ではわかっていても目先の欲求に勝てないという特性をもつのです。
ですから目先のごほうびを使うのは、子どもの脳の報酬系回路がある程度高度に育つまでの期間限定だと考えればよいのです。
目先の報酬を用いる時のコツ
・子どもの成長にともなって満足するごほうびがエスカレートするのは仕方ないことですから、最初のごほうびはできるだけシンプルなものから始めましょう。
・価値があるのはごほうびのお菓子でもお金でもなく、我慢したお子さまの心がすばらしいのだということ、そしてそんな子どもをお父さん、お母さんは心から誇りに思うということをいつもお話してあげましょう。
・ごほうびを与えることが常態化しないようにいつも気を配り、「お菓子やおもちゃなどのごほうびがなければやらない」という意識を与えないよう、常に「物よりも心」が大切という意識が子どもの心に深く根付くように心がけてください。
健全な形で子どもの忍耐力が上がるとき、それは我々、親の忍耐力もすばらしく向上しているものです。親子で一緒に、広くてしなやかな心を培っていけるとよいですよね。
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