赤ちゃんの原始反射とは何か?
まず、そもそも赤ちゃんの原始反射とは何か見ていきます。
赤ちゃんの原始反射(げんしはんしゃ、primitive reflexes)は、モロー反射のように、赤ちゃんが生まれたときから備えている反射的な運動のことを「原始反射」といいます。赤ちゃんが外からの危険から身を守り、また運動機能の発達のためになくてはならない運動です。
原始反射の多くは一般的には生後0~3ヶ月の時期に活発にあらわれ、生後4~5ヶ月を目安に徐々に消えていきます。原始反射が消失することで、自分の意志で身体を動かすことができるようになっていきます。
原始反射は脳幹が主となってはたらく動きです。そのため原始反射の出現と消失を確認することで、脳や脊髄をつかさどる中枢神経の発達が順調であるかを確認する一つの指標となります。
原始反射の一覧
反射の名前 | 特徴 | 起きる時期 |
---|---|---|
モロー反射 (Moro reflex) | 突然の音や動きに対して両腕を広げ、その後抱きつくような動作をする | 生後すぐ~4ヶ月 |
バビンスキー反射 (Babinski reflex) | 足の裏を刺激すると、足の指が扇状に広がる | 生後すぐ~2年 |
吸てつ反射 (sucking reflex) | 乳首や指を口に近づけると吸う動作をする | 生後すぐ~4ヶ月 |
検索反射 (rooting reflex) | 口の周りを触ると頭をその方向に向け、口を開く | 生後すぐ~4ヶ月 |
歩行反射 (walking reflex) | 赤ちゃんを立たせると歩くような動作をする | 生後すぐ~2ヶ月 |
把握反射 (grasp reflex) | 手のひらに触れると、指を握る | 生後すぐ~6ヶ月 |
緊張性頸反射 (tonic neck reflex) | 頭が一方向に向くと、同じ側の手足が伸び、反対側が曲がる | 生後すぐ~6ヶ月 |
パラシュート反射 (parachute reflex) | 倒れそうになると腕を伸ばして身を守る | 7ヶ月以降 |
ギャラン反射 (Galant reflex) | 背中を片側に沿って刺激すると、体が同側に曲がる | 生後すぐ~2ヶ月 |
足踏み反射 (stepping reflex) | 赤ちゃんを立たせると足を上下に動かす | 生後すぐ~2ヶ月 |
以下にいくつかの代表的な原始反射を紹介します。
1.モロー反射(Moro reflex)
赤ちゃんが突然の刺激や落下の感覚を経験すると、腕や脚を広げ、その後に突然収縮させる反射です。これは、赤ちゃんが外部の刺激に対して驚きや回避反応を示すための反射です。
2.バビンスキー反射(Babinski reflex)
バビンスキー反射は、赤ちゃんの足の裏を刺激すると、足の指が広がる反射です。この反射は、成人においては異常とされますが、赤ちゃんでは正常な神経系の発達を示すものです。
3.吸てつ反射(sucking reflex)
赤ちゃんの口に何かを触れると、自動的に吸う反射です。これにより、赤ちゃんは哺乳や授乳が可能になります。
4.検索反射(rooting reflex)
赤ちゃんの頬や口の周りを触れると、自動的にその方向に頭を動かす反射です。これは、赤ちゃんが授乳の準備をするための反応です。
5.歩行反射(walking reflex)
赤ちゃんを立たせると、足の動きを模倣した歩行のような反射が現れます。ただし、生後数週間でこの反射は消失し、本格的な歩行ができるようになるまでの発育が必要です。
これらの原始反射は、生まれたばかりの赤ちゃんが生存し、成長するための重要な反射的な動作です。ただし、これらの反射は数ヶ月から数年の間に段階的に消失し、より複雑な運動や行動が発達することによって置き換えられていきます。
赤ちゃんの原始反射に関する理解を深めることは、彼らの成長過程をより良く把握する第一歩です。次のステップとして、「いつ赤ちゃんが歩き始めるか」ということも多くの親が気になることでしょう。
以下の記事では、歩き始める時期、それに伴う成長のサイン、親としての対応策など、重要な情報が提供されています。赤ちゃんの次なる成長段階についてもっと知りたい方は、この記事をチェックしてみてください。
原始反射ってすごく興味深いよね。これらの反射が赤ちゃんの健康と成長の大切なサインなんだ。特にモロー反射は、赤ちゃんの反応能力を示す重要なもの。ここから先では、モロー反射に焦点を当てるよ。この不思議な反射についてさらに深く掘り下げているよ!
モロー反射とは何か?
ここからは原始反射のなかでも最も有名な「モロー反射」についてより細かく見ていきます。
モロー反射とは、乳幼児に見られる外部からの刺激によって起きる、生まれつきの正常な反応です。脳幹レベルでの反射のひとつであるといわれていて、別名「抱きつき反射」ともいわれます。
例えば、赤ちゃんのそばで大きな音を立てた際に乳児が両手を広げて抱きつくような反射動作をあらわします。
まるで驚いたかのように手足をビクッと痙攣させたあとに、バンザイのような両腕の動きをするのが特徴です。
モロー反射はオーストリアの小児科医エルンスト・モローによって発見されました。
乳幼児の頭部を30度ほど持ち上げた後、急に支えをはずし、頭を落下させたり、腕を外転・伸展させ指を広げたり、内転・屈曲させ抱きつくような動きを見せます。このような動きは、母親から落下しそうになった時、近くにあるものにつかまる事で、落下の危険を回避するという利点があると考えられています。
モロー反射が起こる時期
出生直後より出現し、通常は生後4ヶ月頃には消失します。モロー反射の消失によって、首の据わりや首の運動が可能となるとされます。モロー反射の消失が遅れることがあったり、逆に本来あってよいはずの時期に反射の強弱がある場合、何らかの障害がある可能性もあるので小児科に相談してみましょう。
ただ、個人差があるものの、生後半年も経てば自然としなくなることが多いので、あまり深く考えこむ必要はありません。
モロー反射への対応の基本的な心がまえ
とはいえ、なかなかモロー反射がなくならい時など心配になってしまうパパ・ママも多いと思います。また、モロー反射が激しくて、寝ようとしても自らの反射で目が覚めてしまう赤ちゃんもいて、睡眠不足がつらいというお母さまもいると思います。
基本的には気にしすぎないほうがよいですが、それでも気になるようなら日々の赤ちゃんのモロー反射の様子を記録して、検診の際などに主治医の先生に相談してみましょう。また、他にできうる心がけや対処法は以下になります。
1.スキンシップを欠かさない
モロー反射は、赤ちゃんに与えられるあらゆる刺激が原因で起こるものです。そのため、赤ちゃんがいる環境を見直すことでモロー反射の激しさを抑えられる可能性があります。赤ちゃん自体に異常があるわけではなく、大人が気付かないだけで、周囲の環境がうるさかったり、部屋が明るすぎたり、エアコンが効きすぎていたりすることが多いです。一度、赤ちゃんがいる部屋の環境を見直すことをおすすめします。
さらに、赤ちゃんが常にリラックスした状態で過ごせるように、おくるみで手足を包んであげたり、スキンシップを念入りにしてあげたりすることが大切です。ぜひ試してみましょう。
2. 個人差があることを理解する
「モロー反射が長引くから病気かも…?」と心配する方も多いですが、一概にそうとはいいきれません。発育には個人差があるので、そのような理由で長引いているだけという可能性も大いにあります。
ただし、モロー反射があまりない赤ちゃんは、「核黄疸」という症状が出ている可能性があります。「核黄疸」は肌が黄色っぽくなる黄疸の一種です。この黄色の色素が脳に沈着すると、脳や運動機能に影響を与える症状なので、一度かかりつけのお医者さんに診てもらったほうが良いでしょう。
モロー反射は、赤ちゃんの中枢神経が正常に機能しているかどうかを見る赤ちゃん独特の反射反応です。頻度や時期は本当に個人差が大きいものなのですが、赤ちゃんならではの可愛らしい動作を見過ごさずに過ごせるとよいですよね。
モロー反射が激しい場合の対処法
多くのパパ・ママが子どものモロー反射に不安を感じることとして、モロー反射が激しく子どもが泣きだすというケースが挙げられます。この場合、どう対応したらよいのでしょうか。
よくある現象としては、刺激に対して大きな動きで反応した赤ちゃんが、自分の動きに対してびっくりしてしまいその衝撃で泣く、というメカニズムで起こります。モロー反射は刺激に対する無意識の反応のため、パパ・ママにできることは赤ちゃんに不要な刺激を与えないように環境を整えてあげることです。
- 大きな音をなるべく立てない
- 赤ちゃんが極端な熱さ、冷たさに触れないようにする
(冷たい風や指でも赤ちゃんはびっくりしてモロー反射を起こすことがあります) - こまめなスキンシップで赤ちゃんを安心させてあげる
また、寝かしつけの際に赤ちゃんがモロー反射を起こし、なかなか寝てくれなくて悩んでいる、というパパ・ママもいるかもしれません。この場合、寝かしつけるとき、特に赤ちゃんを抱っこしている腕の中からベッドへ移すときがポイントです。赤ちゃんにとって刺激となる要因をできるだけ少なくする、以下のような工夫をすることが大切です。
- ベビーベッド・赤ちゃんの寝具を、抱っこされている腕の中の体温くらいにあたためておく
- 抱っこから腕を抜くときに、赤ちゃんの首の角度や体勢が大きく変わらないようにする
- 扇風機の風やヒーターの光が赤ちゃんに直接当たらないようにする
このように、モロー反射が激しく、一度起こるとしばらく泣き続けてしまうなどという場合、まずは子どもに余計な刺激を与えないような環境づくりをすることが重要です。また、モロー反射から泣きだす子どもの大半はびっくりして泣いています。パパ・ママがこまめにスキンシップをとることで赤ちゃんを安心させてあげることも一つの方法です。
バビンスキー反射とは何か?
原始反射では、モロー反射と同じくらいよく聞く代表的な反射である「バビンスキー反射」についても見ていきましょう。
赤ちゃんのバビンスキー反射は、生後数か月から1歳頃ごろまで見られる正常な神経反射です。
バビンスキー反射をチェックする方法
赤ちゃんのバビンスキー反射では、足の裏の外縁を刺激すると、足の指が広がる反応が起こります。この反射は、中枢神経系の発達の一環として現れるものであり、赤ちゃんの神経系が正常に機能していることを示すものです。
バビンスキー反射が消えない原因や対処方法
成長とともに通常は1歳ごろまでには赤ちゃんのバビンスキー反射は徐々に消失し、代わりにより成熟した運動パターンが現れます。
赤ちゃんのバビンスキー反射が消失せずに1歳を過ぎても現れる場合や、他の異常な反射や神経系の問題と組み合わさって現れる場合は、医師に相談してみましょう。
家庭での気になることを都度記録すると、医師の診察時に参考になります。赤ちゃんの様子を観察し、それを日付と共にメモしておきましょう。
原始反射の観察を通じて赤ちゃんの神経系発達の初期段階を理解することは、健康的な成長を確認する上で重要です。
次の成長のマイルストーンである「喃語」についてもっと知りたい方は、以下の記事もご参考ください。この記事では、赤ちゃんが発する最初の言葉の形成に焦点を当て、親がその発達をどのように支援できるかについて解説しています。
赤ちゃんの原始反射に関するよくある質問
赤ちゃんの原始反射に関する相談でよくある質問をまとめました。(タップして回答内容を確認)
【まとめ】:「モロー反射」「バビンスキー反射」は子どもの発達プロセスと理解する
ここまで見てきましたように、「モロー反射」「バビンスキー反射」とも、赤ちゃんの時期に現れる正常な反応で、「モロー反射」は4~5ヶ月で、「バビンスキー反射」は1歳以降遅くとも2歳までには消失していきます。
消失の時期には個人差もあるので、神経質になりすぎる必要はありません。赤ちゃんの時期特融の可愛らしい反応と、余裕をもって接してください。
とはいえ、あまりにも反応が弱かったり、消失が遅すぎるときは、神経系の異常があるケースもあります。
実際、パパ・ママにとって、モロー反射と他の疾患の症状を区別することは難しい場合も多いです。モロー反射などの原始反射を通して、少しでも不安を感じたときは乳幼児健診の際に保健士や医師に相談したり、かかりつけの小児科へ相談したりすることをおすすめします。
この記事では、赤ちゃんの原始反射について解説しましたが、発達の旅はここからがさらに面白くなります。赤ちゃんの脳の成長は驚くべき速さで進み、この過程で「メンタルリープ」と呼ばれる重要な段階を経験します。
下記の記事では、メンタルリープがいつ起こり、赤ちゃんの行動や気分にどのように影響するか、そしてそれにどう対応すればよいかについて詳しく解説しています。赤ちゃんの成長におけるこの興味深い側面をさらに理解したい方は、ぜひこの記事もお読みください。
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