嘘をつかない子供に育てるために③~「他人を思いやるためにつく嘘」への対処法~

No.130更新日付:2024年11月14日

一般的に2歳半ごろから子どもは嘘をつくようになるといわれています。コラムNo.82「子どもが嘘をつくのはなぜ?~2歳半からの幼児期の子どもの嘘の特徴について~」では、2歳半から4歳ごろに特有な「子どもの嘘」の種類や、「子どもの嘘」への対応の仕方が人格形成にいかに重要であるかをご説明いたしました。

また、コラムNo.129「嘘をつかない子供に育てるために②~「自分をかばう嘘・自分を大きく見せる嘘」への対処法~」では、幼少期に見られがちな、自分をよりよく見せるために罪のない範囲で物事を誇張して話してしまうような嘘の対処法を中心に解説しました。

さらにこちらのコラムでは、もう少し子どもが成長すると見られてくる「他人を思いやるためにつく嘘」への対処法を中心にご説明していきます。

子どもの嘘は徐々に「利己的な嘘」から「他人を思いやる嘘」へ変化していきます。今回は、子どもの嘘の理由とその対策について説明します。

ちなみに嘘の15分類は以下になります。


「子どもの嘘」の全体的な解説はコラムNo.82「子どもが嘘をつくのはなぜ?~2歳半からの幼児期の子どもの嘘の特徴について~」で掲載していますので、ぜひあわせて読んでみてくださいね。

相手をだます気がない嘘
1.空想が膨らんで現実と混同してしまう
2.話をよく理解していないためおかしな回答をする
3.表現力〔語彙〕不足のためうまく意思を伝えられない
4.言葉遊び


子ども自身が「嘘をついている自覚のある」嘘(=親としての対応が必要)
5.願望が大きくなって現実と混同してしまう
6.怒られないようにとっさに出る嘘
7.自分をかばうためにつじつまを考えながらつく嘘
8.相手の気を引いて自分に注目してもらいたい
9.本当の自分の気持ちを理解してもらえないいらだち
10.根ほり葉ほり聞かれる面倒を避けるため
11.立場の強い子からの口止め
12.仲間をかばうため
13.親の期待に応えて喜ばせるため
14.ねたみや復讐
15.相手の心を傷つけないため

自分に注目してもらうために気を惹こうとする嘘

早い子では2歳ごろから、「相手の気を惹き、自分に注目してもらいたい」という理由で嘘をつくようになります。しかしこの嘘は、顕著にみられる子と、全く見られない子にハッキリ分かれます。

親が子どもの「見てほしい」に丁寧に対応することが大切

親が常に子どもの言動を気にかけて、子どもが見てほしい・聞いてほしいと思っている時に丁寧な対応をしている家庭の場合、子どもはこのタイプの嘘をつきません。

丁寧な対応というのは、常にどんなときでも子どもを最優先にするということとはいえません。例えば、急ぎの家事や仕事をしている時に話しかけてきた時、「ごめんね。今、このお仕事だけ大急ぎなの。終わったら必ず聞くからね。

楽しみにしてお仕事頑張るからね」と丁寧な対応でその場は断り、後で必ず聞くようにします。

忙しくない時ならば、子どもの言葉にはすぐに対応します。時には子どもの行動を観察して、何か成功して喜んでいる時には、「すごいね、頑張ったね~」とこちらから先回りして褒めてあげます。

このように、「お母さん・お父さんはいつも自分を見てくれている、自分を大切にしてくれている」と心から信じ切っている子どもは、気を惹くためにわざわざ嘘をつこうとはなかなか考えないものです。

子どもの「見てほしい」の対応がよくない場合に起きること

逆に、親が子どもの「見て!聞いて!」のサインに気づかず、声をかけてきた時に「静かにしなさい」「あちらで遊んでいなさい」「今忙しいの」と返答するのはあまりよい対応とは言えません。

もし、「家事や仕事の最中でも、子どもが何か注意しなければならない事をした時にはすぐに注意しに行く」「何か痛みを訴える時にはすぐに寄り添って、大変心配する様子を見せる」といった対応を親が続けると、子どもはどのように感じるでしょう。「『見て!聞いて!』と言っても聞いてくれないけれど、お母さんやお父さんが怒ることをすれば自分の相手をしてくれ、どこか痛いと言えばずっと自分のそばにいてくれる」と学習してしまいます。いたずらをすればもっと自分に注目してくれると覚えてしまった子どもは、どれだけ叱られてもなかなかやめられなくなります。

「手のかからないよい子」の場合も注意が必要

また、2歳頃ごろまでに親が、「うちの子は愚図ることもなく、わがままをいうこともない、手のかからないよい子」と思っている場合も同様に少し注意が必要と言えます。

子どもは親を心配させないために、寂しい思いを我慢しているのかもしれません。このような手のかからないよい子だと思われていた子どもがある日突然不登校気味になることもよくある事例です。病気になればかまってもらえると深層心理で学習してしまうと、仮病を用いるだけではなく、自分の心の力で本当に自家中毒を引き起こしてしまうケースもあります。

怒られるためのいたずらとして現れる場合も、体のどこかが痛いと訴える仮病の形で現れる場合も、真の原因は「親に構ってもらいたい寂しさ」であると考えられています。ですから、嘘を叱るよりも子どもが嘘をつかず自然に過ごしている時を見計らい、たっぷりと抱きしめて愛情を示してあげることが一番の予防策といえます。

本当の自分の気持ちを理解してもらえないいらだちからくる嘘

「本当の自分の気持ちを理解してもらえないいらだち」も子どもの嘘の理由の一つです。しかしどちらかと言えば、「嘘」という形よりも「ぐずり」「怒り」「八つ当たり」といった形であらわれるほうが多いです。その延長として売り言葉に買い言葉的な「嘘」が飛びだします。

親が子どもを叱る時も同様のことが起こりがちです。叱る原因となった事柄の前後の出来事を十分に把握しないまま、結果からその過程を決めつけて叱ってしまう場合です。

子どもは「違う、そうじゃなくて!」と必死で訴えたくても、それをうまく説明する語彙力や論理性はまだありません。

そんなモヤモヤが広がってしまうと、子どもは自分の要求や怒りの原因もわからなくなってしまうようです。

こうなるとただモヤモヤ・イライラした気分を発散するために大声を出したり、「もういい!」と逃げ出そうとしたりします。逃げ出すためなら何でも適当なこと言い始め、結果として嘘をつくことになります。

親が子どもの気持ちを「決めつけない」ことが大切

このような状況を回避する一番のコツは、何よりも大人が子どもの気持ちを「決めつけない」ことでしょう。「きっとこうだろう」という予測はちょっと心の隅に棚上げしておいて、先入観を持たずに子どもの話に耳を傾けます。子どもの言葉がたどたどしくても復唱をしてあげながら、決して「こうでしょ?」と口を挟まず、最後まで聞いてあげます。

根ほり葉ほり聞かれる面倒を避けるための嘘

幼稚園の年中ごろになると、「根ほり葉ほり聞かれる面倒を避けるため」の嘘をつき始めます。それほど深刻なものではないですが、親が少々過保護・過干渉気味の時は早い時期からこの傾向がみられるようです。また、女の子よりも男の子に多いと言われています。

保育園や幼稚園での日常のささいなことを、毎日事細かに聞かれては子どもも面倒に感じてしまいます。まだ自分で上手く説明ができず、話すために長い時間がかかるなら、その時間に遊びたくなるのです。

根ほり葉ほりしつこく質問される経験が増えると、子どもは何か話すべきことがあった時にも「別に」「何もなかったよ」「普通だよ」と答えて、会話を短く打ち切る方法を覚えてしまいます。本当に深刻なトラブルに巻き込まれそうな時にも発見が遅れる可能性があります。

夕食時の簡単な報告会を習慣化する

能動的な取り組みのひとつとして、夕食の時に一日の簡単な報告会をして、親が知らない時間の子どもの様子を話してもらう方法があります。それが習慣になると、子どもも話し方が自然と上達し、親も普段から情報を把握している安心感から、過剰な質問や過干渉気味の声がけを避けることもできます。

親の期待に応えるための嘘・親を喜ばせるための嘘

幼稚園の年長ごろになるとみられ始める嘘です。「かけっこで1等になったよ」「宿題が全部花丸だったよ」など、何かの出来不出来や集団の中での評価に関わる内容が多いです。

これは、「見栄を張りたい気持ちや侮られたくない」という利己的な理由ではなく、「お母さん・お父さんを悲しませたくない」という利他的、他人を思いやる気持ちから生まれています。子どもの優しい心の成長を喜びたいところですが、親の期待が重荷となってわが子に嘘をつかせてしまうのは残念です。

「できたか」ではなく「頑張ったこと」を褒めてあげる

このような状況を防ぐためには、「子どもを褒める時の声がけ」もよい機会のひとつです。「できるようになって本当に良かったね!偉かったね。」の後に、「できたことよりも、できるようになるまで頑張り続けたあなたの努力がすばらしい。よくあきらめずに頑張ったね、頑張るあなたが大好きよ」と続けます。重要なのは「できたか・できないか」ではなく「できるまで頑張り続けたこと」や「できなくても練習を続けたこと」だと語り聞かせます。

少し難しい話なので、子どもは十分に理解できないかもしれません。しかし、何回も経験するうちに、結果の出来不出来よりもその過程で得られた経験に価値を置く考え方は、子どもの心にしっかり根付いていきます。一度や二度の失敗ではくじけず、自分の精一杯の努力に対して悔やむことのない強い子どもに育つことでしょう。

「親に心配をかけないための嘘」も同じもの

また、「親に心配をかけないための嘘」もこの類です。親が過剰に心配し過ぎてしまい、わが子にはその遊びや活動に必要な力はすでに十分備わっているにも関わらず、禁止事項を作りすぎている時に生じやすいと言われています。

例えば、友だちと木登りを楽しんできたけれど、お母さんが心配しすぎるから「そんなところに行っていないよ」などと言ってしまうという嘘です。小学生になると、友だちとの危険のない遊びと親の過度な心配の板挟みで悩む子どもも少なくありません。過度に心配をするよりも、子ども自身の運動能力や判断力を適切にステップアップさせることが子どもの安全につながるのです。

まとめ:「他人を思いやる嘘」には、親子の丁寧なコミュニケーションが重要

いかがでしたでしょうか?

「他人を思いやる嘘」は、子どもがある程度精神的に成長してきたからこそつく嘘で、ある意味では子どもの成長を喜ぶべきシチュエーションなのかもしれません。

いずれも、親子の間で丁寧なコミュニケーションが取れていれば、大きな問題としてあられることは少なくなるはずです。子どもの気持ちを決めつけたり、過度に心配したりせず、毎日丁寧に子どもと接してあげてくださいね。

次のコラムNo.131「嘘をつかない子供に育てるために④~「友だちとの関わりから生じる嘘」への対処法~」では、成長の最終段階でみられる「友達とのかかわりから生じる嘘」について、その対処法も含めて解説していきます。もしお時間があれば続けて読んでみてください。

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嘘をつかない子供に育てるために④~「友だちとの関わりから生じる嘘」への対処法~

一般的に2歳半ごろから子どもは嘘をつくようになるといわれています。コラムNo.82「子どもが嘘をつくのはなぜ?~2歳半からの幼児期の子どもの嘘の特徴について~」では、2歳半から4歳ごろに特有な「子どもの嘘」の種類や、「子どもの嘘」への対応の仕方が人格形成にいかに重要であるかをご説明いたしました。また、コラムNo.128~130では、子どもの成長にともなってみられるそれぞれの嘘のタイプごとに解説してきました。前回のコラムNo.130「嘘をつかない子供に育てるために③~「他人を思いやるためにつく嘘」への対処法~」では、ある程度子どもが成長し、年中~年長ごろからみられる「他人を思いやるためにつく嘘」への対処法を中心にご説明いたしました。こちらのコラムでは、さらに子どもが成長し、大人の社会でも見られるような複雑な嘘をついた場合の対処法を中心にまとめています。子どもの成長に応じて読んでみてくださいね。
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一般的に2歳半ごろから子どもは嘘をつくようになるといわれています。コラムNo.82「子どもが嘘をつくのはなぜ?~2歳半からの幼児期の子どもの嘘の特徴について~」では、2歳半から4歳ごろに特有な「子どもの嘘」の種類や、「子どもの嘘」への対応の仕方が人格形成にいかに重要であるかをご説明いたしました。また、コラムNo.128「嘘をつかない子供に育てるために①~「嘘はいけない」の伝え方、とっさに出る嘘への対処法~」では、子どもにまずは「嘘はよくないこと」と刷りこむことの重要性と、子どもによくある「怒られないようにとっさに出る嘘」への対処法を中心に解説しました。さらにこちらのコラムでは、同じく子どもの時期に見られる「自分をかばう嘘・自分を大きく見せる嘘」への対処法を中心にご説明していきます。
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嘘をつかない子供に育てるために①~「嘘はいけない」の伝え方、とっさに出る嘘への対処法~

一般的に2歳半ごろから子どもは嘘をつくようになるといわれています。コラムNo.82「子どもが嘘をつくのはなぜ?~2歳半からの幼児期の子どもの嘘の特徴について~」では、2歳半から4歳ごろに特有な「子どもの嘘」の種類や、「子どもの嘘」への対応の仕方が人格形成にいかに重要であるかをご説明いたしました。こちらのコラムでは、一歩先へ進んで、子どもにどのように「嘘はよくないこと」と伝えていくべきか、また子どもの「怒られないようにとっさに出る嘘」への対処法を中心に解説していきます。
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子どもが嘘をつくのはなぜ?~2歳半からの幼児期の子どもの嘘の特徴について~

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