嘘をつかない子どもに育てるために、何でも話せる親子関係を築くことはとても重要です。今回は上述したように、子どもの世界のみならず大人の間でもよくあるような難しいパターンの嘘について説明していきます。
ちなみに嘘の15分類は以下になります。
「子どもの嘘」の全体的な解説はコラムNo.82「子どもが嘘をつくのはなぜ?~2歳半からの幼児期の子どもの嘘の特徴について~」で掲載していますので、ぜひあわせて読んでみてくださいね。
相手をだます気がない嘘
1.空想が膨らんで現実と混同してしまう
2.話をよく理解していないためおかしな回答をする
3.表現力〔語彙〕不足のためうまく意思を伝えられない
4.言葉遊び
子ども自身が「嘘をついている自覚のある」嘘(=親としての対応が必要)
5.願望が大きくなって現実と混同してしまう
6.怒られないようにとっさに出る嘘
7.自分をかばうためにつじつまを考えながらつく嘘
8.相手の気を引いて自分に注目してもらいたい
9.本当の自分の気持ちを理解してもらえないいらだち
10.根ほり葉ほり聞かれる面倒を避けるため
11.立場の強い子からの口止め
12.仲間をかばうため
13.親の期待に応えて喜ばせるため
14.ねたみや復讐
15.相手の心を傷つけないため
2種類の友だちとの関わりから生じる嘘
「立場の強い子からの口止めによる嘘」「仲間をかばうための嘘」は、非常に高度で複雑なものです。
知能と社会性の発達が進んでいなければ生じないので、まずはわが子の健やかな成長を喜びます。さて、このタイプの嘘は早くて幼稚園の年長ごろから始まります。小学5年生くらいから中学生ごろのデリケートな期間にも、親も子どもも悩ませる原因になりやすいものです。
「立場の強い子からの口止めによる嘘」は、自ら嘘をつきたいと思っておらず、強い友だちへの影響を考えている状態であるのに対し、「仲間をかばうための嘘」は、友だちが叱られるのをかばいたいという思いやりから自ら嘘をつくことを選択している状態です。
これは大変大きな違いです。子どもはこの一連の出来事から多くのことを学びますが、人間関係が絡むのでトラブルが生じやすくもあります。このとき子どもは、同じ原因によって複数回の嘘を重ねなければならなくなるものなので、親は必ずといっていいほど見抜くことができるはずです。
「友だちとの関わりから生じる嘘」を親に話したくない理由
では、なぜ子どもは友だちとのトラブルの気配を感じながらも親に話してくれないのでしょうか。その理由はとても単純です。過去の経験から、「お母さんやお父さんに話すと、事態はかえって自分の望まない方向に進んでしまう」と強く感じているからです。
親に話して物事が良くなるとわかっていればとっくに話しているものです。自分の困った状況が改善されないにも関わらず、親に「何もないよ」と嘘をつくのは、子どもなりに、話すと状況は余計に悪くなると判断しているとも考えられるのです。
ところで、4月の小学校では、毎日子どもたちが大慌てで「先生!大変だよ!」と叫びながら走りまわっています。しかし、日常的に学校内で起きることは、A君とB君のけんかや何かモノが壊れたなど、家庭内と同じように大それたことではありません。
そこで先生が決して慌てず、余裕の笑顔で「大丈夫だよ」とテキパキ問題を解決してあげます。すると、1ヵ月後には自分たちで解決できるようになり、手に負えないと判断した時にはのんびりした声で、「先生、ちょっと来て~」と呼ぶようになるのです。しかし、大人が子どもと一緒になって慌てていると、いつまでも子どもの「大変!」はなくなりません。
親は嘘に対して慌てず笑顔で対応することが大切
親は、友だちとのトラブルによる子どもの嘘に気づいても絶対に慌てず、たとえ内心では慌てていたとしても不安そうな表情は子どもには見せないようにします。親の深刻そうで感情的な顔を見れば見るほど、子どもは親に知らせることによってトラブルを大きくしないように嘘をつき続けるものです。
まずは笑顔で子どもを安心させ、「何か困っていることや心配していることはない?」とズバリ聞いてしまいます。子どもが「何もないよ」と答えても、「そう?お母さんはあなたが大好きだからいつもと違う時はすぐにわかるよ。何があっても助けるからね。何か心がモヤモヤすることない?どんな小さなことでもいいよ」と語りかけます。
それでも答えなければ「そう、じゃあつらい時にはいつでも言ってね」などとその場は切り上げます。決してしつこくは追及しません。けれども、親が笑顔だと子どもはたいてい正直に話してくれるものです。親の不安そうな顔は子どもの不安も増幅させますが、親の笑顔は「もしかしたら助けてくれるかも」と思わせる大きな力となるのです。子どもが小さければ小さいほど正直に話してくれる確率は高まり、トラブルも解決しやすいです。
立場の強い子からの口止めによる嘘
さて、子どもが話してくれた嘘が「立場の強い子からの口止めによる嘘」だった場合、まず「その友だちが好きなのか嫌いなのか」「これからも一緒に遊びたいのか」を本人からしっかりと聞きだします。
親の考えを押しつけず事実と対応を共有する
この時に親の考えを押しつけてしまうと「やっぱり解決してくれない」と思わせてしまい、次回正直に話してくれなくなる可能性もあります。もし、嘘の内容が誰かに迷惑をかけたなど緊急の対応が必要ならば、親子で一緒にしっかり対応します。相手の子の親御さまに連絡を取る必要があれば連絡します。ですが、子どもを非難するようなことは一切言わず、ただ事実のみを伝えます。
そして子どもには、自分の対応を共有します。そして、子どもに謝らせることよりも、親が謝る姿を見せることを大切にします。「子どものした事は親の責任、親がしっかり謝ります。でもあなたも一緒に謝ることができたらとても偉いわ」などと話しておきます。何も悪くない親が自分のせいで頭を下げる姿は、子どもの心を強く動かすものです。
急を要さない内容ならば、じっくり時間をかけて解決していく
また、嘘の内容が子ども同士のことであまり急を要さないならば、焦らずじっくりと時間をかけます。子どもが正直に話してくれさえすれば、状況が毎日刻々と変化していくのがわかります。友だち同士の心のぶつかり合いから学べることはとても大きいです。心の痛みを知ると他人の心の痛みもわかります。人の心を傷つけてしまうと、どのくらいで人は傷つくのかがわかります。幼い頃に傷つけ・傷つけられる経験を積むことは、優しい心と強い心を育むために必要不可欠ともいえるのです。
仲間をかばうための嘘
では、子どもの嘘が「仲間をかばうための嘘」だった場合、まず友だちをかばうその心を褒め、共感して認めてあげます。褒めるべきことと叱るべきことが同時にある場合、まずは褒めることから始めると子どももその後の言葉を受け入れやすいものです。
しかし、「それでも嘘は絶対によくないよ」と強い語調で、けれど怒ることはなく諭します。嘘は更に新しい嘘を生むだけで解決にはつながらないことを伝え、その後一緒に問題を解決します。そして、「今後はたとえ友だちをかばうためでも、嘘をついたら厳しく怒るからね」と宣言しておくのも一つの方法です。
妬みや復讐のための嘘
「羨ましい」「気に食わない」という妬み嫉みの心は、自分以外の相手に対する様々なマイナスの感情を引き起こします。自分に害を与えているわけでもない・何か嫌な言動をしているわけでもない相手をなんとなく嫌いだと感じる時にも、嫉妬の心が根底にあるのはよくある話です。いじめも原因を深くつきつめると嫉妬の心によるものが多いです。
嫉妬心は人間以外の哺乳類や鳥にもみられる感情です。一説によると、動物の雄と雌が生命力の強い相手と巡りあって子孫を増やすために必要な能力だったとも言われています。
ですから、他の動物と違って大脳新皮質を発達させてきた人間にとって、「嫉妬心」は一生をかけて克服すべきテーマの一つなのかもしれません。
頭から否定するのではなく人間が生まれながらにもっているものと認め、事実として受け入れた上で「いかに乗り越えていくか」を自分の課題にするのが、己の中に潜む嫉妬心との上手な付き合い方だとも考えられます。
むやみに叱らず嫉妬心を認めて抱きしめてあげる
幼い子どもにも、小さな嫉妬心の芽はしっかりと見られます。もっとも最初の嫉妬は「誰かにお母さんを取られそうな時」にあらわれます。兄妹げんかの原因は、実はお母さんを取られたくないという気持ちが真の原因だということも少なくありません。
幼い子どもの行動が、嫉妬心やリベンジしたい気持ちに支配されている時にはむやみに叱らず、そのかわりに強く抱きしめます。そして、「今あなたが感じているモヤモヤした苦しい気持ちは、人間誰の心にでも住んでいる心。その心と戦っているなんてえらいね、それはとても勇気のいることよ。」と言って抱きしめ続けます。
こういう時には、子どものついた嘘についてはあえて触れずに聞き流し、事実の部分だけに対してなるべく肯定的な言葉をかけてあげます。荒れ狂うような自分の感情を抑え込むことに勝利した経験を重ねた子どもは、感情の自己コントロールが次第にうまくなるともいわれています。
相手の心を傷つけないための嘘
「相手の心を傷つけないための嘘」は最も難しい判断を要します。この場合の嘘を一概に悪いことだという人は少ないでしょう。
もし、15歳くらいを過ぎた子が「相手が傷つこうが傷つくまいが、正直に真実を伝えるのが正しい」などと考えるようならば、まだ情緒や判断力を発達させるための経験が不十分だともいえます。
普段から子どもに本音をストレートに話すことが大切
この嘘は、相手に真実を伝えるか伝えないか、どちらが本当に相手のためになるのかという判断基準について、子ども自身を悩ませます。そしてそれは状況によって変わります。ですから、この段階に到達した子どもに必要なのは「本音で相談できる友だち」の存在です。その存在はやがて交際を重ねるうちに大切な親友となります。
普段から親が子どもに建て前や世間体だけではなく、本音をストレートに話していれば、子どもは自分が心の中で思っている本音を言ったら叱られるなどとは考えません。そんな子どもの回りには共感してくれる友だちも集まるものです。
まとめ:親子の丁寧なコミュニケーションが子どもを成長させる
いかがでしたでしょうか?
これまで数回にわたり、子どもの成長に応じてみられる嘘の種類とその対策についてご説明してきましたが、いずれにしても幼少期から親子の間で放任でも過干渉でもない適切なコミュニケーションが丁寧におこなわれていれば乗り越えていける話だということがわかります。
「嘘をつく」というのは、子どもの精神の成長のあらわれでもあります。日頃から子どもと適切な距離で接してあげて、時に応じてその精神の成長をよろこぶ心を持ち続けることが大切なのです。
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