幼児期の子どもに文字を「書く」ことを教えるには?~姿勢や手順について紹介!~

No.192更新日付:2024年11月26日

一般的に幼児期の子どもがひらがなを読めるようになるのは3~4歳、書けるようになるのは4~5歳といわれています。この時期の子どもの文字への理解は個人差も大きく、遅いからといって心配する必要は基本的にありませんが、理解しているとつい嬉しくなってしまうのも親心だと思います。

こちらのコラムでは、4~5歳の幼児期の子どもに文字の書き方を教える際の効果的な方法について説明しています。くり返しにはなりますが、この時期は個人差も大きく焦ることはありませんが、一つの参考になれば幸いです。

 

幼児期の子どもが文字を覚えるためのポイント

上述のようにこの時期の「文字習得」は個人差がとても大きいですが、適切な指導を与えればどの子もどんどん書けるようになるのも事実です。運動機能が伸びる黄金期であり、文字を書くという事もまた一つの腕と身体を使った運動機能であるためです。

①【字体】と【字形】

字のきれいな子は【字形】を覚えているのに対して、字の汚い子は【字体】だけを覚えています。

  • 【字体】…文字を構成している「点」や「線」などの基本構造です。「字の骨組み」
  • 【字形】…個々の文字の見た目、形状

【字体】の違いをおおまかに認識できれば字は読めます。0歳でも判別可能です。字体の細部を覚え、筆記用具がある程度コントロールできるならば字は書けますが、これだけでは見やすい字にはなりません。

【字形】を正しく認識できて、お手本をまねることができるようになれば、バランスのよい字が書けます。

 四角いマスの中に字を収めた時、それぞれの画はどこからスタートしどこがゴールになっているのかわかれば必要能力は育っています。点図形の模写ができるかどうかで判断可能です。「3×3」や「4×4」の正方形に並んだ点を結んだ図形を見て、起点・終点を正しく認識・判断し、模写できるようであれば、そろそろ本格的に「字を書く」ことを習得すべき時期です。

 だいたい4~5歳ごろが始め時です。【字形】を正しく書けたうえで、文字の美しさや表現を工夫するのが「書道」です。「字を書く練習を始めよう」と思ったら「字体だけでなく、字形を覚えるようにしよう」と考えると、見やすくてきれいな文字を書く習慣が育ちます。

②なぞり書きは、効率の悪い学習法

字体】を覚えるには「指で書いてみること」が効率的です。

お手本を何回か指でなぞり、見なくても書けそうだと思ったら机や空中に、指で書いてみます。覚える時には「思い出す・想起する」という脳のはたらきが必要です。指で空中に書くと「見て確認して」→「思い出して、指を動かして」という作業を手軽にくり返せるので、想起する回数を稼ぎやすく覚えやすいのです。

字形】の認識には紙と鉛筆を用います。決まった大きさのマスの中に書かせましょう。

お手本をよく見るように伝え、一筆、一筆の始点はどこなのか、曲がるのはどのあたりか、書き終わりはどのあたりかを意識させましょう。最初のうちは、始点や終点や曲がる位置などに点を打ってあげて、それを目印に書かせます。

「覚えるため」には漢字のなぞり書きは、あまり効果がありません。なぞり書きは「線からはみ出さないこと」に意識が集中してしまい、字の形にあまり目が向きません。思い出す必要もないので記憶もされにくいのです。

 覚えるには「お手本をよく見て」→「何もないところにお手本の字をイメージして」→「自分でイメージしたラインをなぞる」のが効果的です。

文字を書く際には「正しい姿勢」が重要

ここからは、子どもが実際に文字を書く際の身体の「正しい姿勢」についてご説明いたします。特に子どもに文字を書くことを教える際には、ひじの使い方がポイントになります。

①身体の姿勢

  • 背筋をまっすぐ伸ばし、背中だけでなく尾てい骨から腰までもまっすぐに伸ばすように意識しましょう
  • 両足を必ず床につけましょう。椅子が高い場合は、足を乗せることのできる台を置くなどの工夫をしてください
  • おなかと机の間には、にぎりこぶしひとつ分あけましょう

②腕・ひじ・手首【最重要ポイント】

  • ひじは絶対に机にのせないようにしましょう
  • ひじとわきの間は、にぎりこぶし2~3個分あけます
  • 書くときは、手首や指はほぼ固定して動かさず、肩を支点に腕全体を動かすようにしましょう
  • 「動き」をコントロールするのは「ひじ」です。「字は、ひじで書く」と教えます
  • 手首や指先だけを動かして書かせないようにしましょう

③手・指

  • 親指・人差し指だけでしっかりと持ち、中指を添える。正面から見ると3本の指の間の空間がきれいな三角形になります
  • 指圧が強すぎても上手に書けません。親指・人差し指・中指ではなく「小指」に力を入れるようにします。小指球(しょうしきゅう)という部分が、ほんの少しブクッとふくらむ程度がよいです

「正しい字形」で覚えることが大切

「正しい字形」で覚えると、字がきれいになるばかりではなく、新しい字を覚える時に役立ちます。「字はいくつかの基礎となる字形のパターン」を覚えると、あとはその組み合わせで書ける文字が増えます。

 ただし、字形には「これが唯一・絶対に正しい字形!」といったものはありません。字体における文字そのものの変遷や、各時代の筆記具による違いなどによって結構違うものです。文科省も旧文部省時代から、字体の判別に影響がなければささいな細部の差で漢字の正誤を判断すべきでない、という方針を打ち出しています。

 「美しく見える基本的なバランス」はしっかり教え、「細部はこだわりすぎず許容範囲を考慮しよう」と認識しておくのがベターです。

 

子どもに自信をつけさせる事も大切

子どもが何かを好きになる時というのは、「できた!」という喜びや「自分は得意!」という自信の影響力が大きいです。「文字をすらすら書けるようにする」という目標を達成したい時も、どれだけたくさんの「できた!」という喜びを与えてあげられるか?と考えます。

  • 画数の少ないものから始めましょう。(できた!を味わわせることが重要)
  • 確実に長期記憶になるまでは、同じ文字をくり返し練習させます。ただし、飽きないように、違う単語や文にまぜて変化をつけましょう
  • 一見難しそうだけれど、実は簡単な課題を織り交ぜましょう(ひらがなのお稽古の際に「十」や「田」など、縦画・横画だけで書ける漢字を織り交ぜる等) 

起筆・収筆を意識させよう

起筆(きひつ)とは、始筆(しひつ)とも言い、文字の一画を書く時の始まりの部分です。収筆(終筆・しゅうひつ)は、終わりの部分です。「とめ・はね・はらい」の3パターンがあります。

起筆・収筆を意識するクセがつくと、その文字の細かい部分がマス目や紙面のどのあたりに、どのように位置しているのかを自然に認識できるようになります。

 起筆のコツは1つだけ。鉛筆を紙に置く時に、真上から垂直ではなくて、左斜めからほんの気持ちだけ右下に打ち込むように置きます。

 終筆のコツは、「とめ」は確実に「鉛筆の動きをしっかり止めること」を意識させることです。

最初のうちは「とめ!」と声に出してあげるとよいでしょう。

 「はね」は、しっかり止めた後に、「ピッ!」と声をかけてはねさせるとよいです。左はねも右はねも、だいたい斜め45度をイメージしてはねると整って見えます。

 「はらい」は、すべり台で滑った時の感覚をイメージさせます。徐々にスピードが落ちてスゥーと紙から鉛筆を離すが、離した後も急には止まらず少し動いたところでようやく止まる感じです。右はらいは一度しっかり止めてから、横にスゥーっと力を抜きます。

 「とめ・はね・はらい」については、あまり神経質に考えすぎる必要はありません。基本さえ身についていれば次第に上手に書けるようになっていくので、「基本」として子どもたちに知ってもらえれば十分です。

実際に子どもに文字を教えるにあたって:「型の練習」「基礎練習」「字体の記憶」を分けて考える

ここまでは幼児期の子どもに文字の書き方を教える際に注意するポイントについて解説してきましたが、ここからは実際に教える際の段取り・手順を説明してきます。ここでのポイントは、「型の練習」「基礎練習」「字体の記憶」と3種類の練習を分けて考えて、別個のタイミングでおこなうことです。

①型の練習

「字の練習」をする時には、「正しい姿勢」と必ずセットでおこないます。最初から「正しい姿勢と美しい文字」をセットで覚えていけば、こんなに楽なことはありません。「型の練習=字の練習」は、子どもにとって苦痛だと感じない量を見極めましょう

 よい姿勢をとるところからカウントして、ゆっくり丁寧に書かせ、大体3分間でできる量が適量です(もっとできるようであれば増やしても構いません。できる子、やりたい子にはどんどんやらせましょう)。

 「反復練習」は大切ですが、小さい子どもにとっては苦手なことの一つです。対策は「1回のセッションはごく短くする」ことです。子どもにとって苦痛だと感じない量を、毎日休まず継続することが大切です。

②基礎練習

型の練習」と並行し、たくさん取り組ませたいのが「基礎練習」です。「書くために必要な機能を向上させるすべての取り組み」を指します。「直線や曲線や丸やきれいな四角形を描く練習」「お手描き」「塗り絵」、筆圧をつけるための「迷路遊び」など、幼児教室ベビーパークでもおこなっているような「かくこと」すべてです。

 これは時間にとらわれず、遊びとして毎日たくさん経験させたいです。こういう時まで「よい姿勢」を強いると「かくこと」そのものを嫌いになります。「文字を書くとき以外」は、少しくらい姿勢や持ち方がくずれても、あまり口うるさく言わないようにしましょう。

 ただし、その時にも「腕・ひじ・手首」の使い方だけは気をつけさせましょう。「ペンをコントロール」するための重要ポイントであり、ここが崩れると矯正するのは本当に困難になってしまいます。

 背筋を伸ばしたりペンの持ち方を意識したりすることに比べると子どもにとってさほど苦痛のない部分なので、ペンを持ったら腕や手首は動かさず「ひじを意識して、腕全体を自由に柔軟に動かしてかく」という点を習慣づけましょう。

③字体の記憶

字体そのものを覚えさせたい時は、わざわざ姿勢を正し紙と鉛筆を使って覚えさせることはありません。手本を見て、ママの手のひらに指で書くなども楽しく取り組めます。くつろげる雰囲気の中で気軽におこないましょう。

子どもが書ける文字が増えてきたら…

ストレスなく一度に書ける文字の量を増やしていきます。まずは10文字、次に20文字、30文字書くことが平気になったら「絵日記」をかかせます。まずは口頭作文で書く内容を口で話させ、書く文字が決まったら姿勢を整えて一文字一文字丁寧に書かせましょう。五十音のお手本を常備しておきます。文字が書けたら、楽な姿勢で自由に絵を描かせましょう。

頑張って書いた後はたくさん褒めてあげよう

「自分は字を書くのが得意だ。上手だ」と思いこませ「やる気」の原動力にしたいので、書いた後は必ず褒めるようにしましょう。

 褒める時はただ「すごいね」「えらいね」などではなくて、「この時のここが上手だね!」「ここがすごいよく書けてるよ」といったように具体的な事実を伝えるようにしましょう。

 「事実の伝達=誉め言葉」になっているような表現が効果的です。時折「〇〇ちゃんは、字を書くのが得意なんだね~」という言葉を織り交ぜるのもよいです。「自分は字を書くのが好き!得意!」思わせることができれば、漢字を覚えたり字をきれいに書いたりする力は後からいくらでも伸びます。

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