「叱らない育児」がなぜ推奨されるのか?
まずは「叱らない育児」が近年推奨されているのはなぜか、その理由から見ていきましょう。
「叱らない育児」が推奨される理由として、特に幼児期の小さな子どもはなぜ怒られるかがまだ理解できず、ただただ親の怒った声や顔が恐怖として印象に残るだけ、という事実があります。
特に0~3歳児の子どもはまだ物事の因果関係を深く理解できる年代ではなく、叱ることは「百害あって一理なし」というのが正直なところです。3歳を過ぎて物の道理をし始めてからも、大人が思うよりはまだずっと理解力は低く、基本的には叱らない育児を続けていくことが望ましいです。
0~3歳の子どもに対する「叱らない育児」については、コラムNo.79「いつから子どもは叱ってよいの? 叱らずに上手にしつけをする方法」でも詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
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「叱らない育児」がもっとも難しくなるのは3~9歳ごろ
ではここからは、特に3歳以上の子どもに「叱らない育児」をしていくにあたっての考え方や具体的な方法について見ていきます。3歳からの「叱らない育児」は難しいとの話をよく聞きますが、その理由についてまず考察していきます。
3歳からは複雑な感情を持つようなるが、まだ自己分析できない時期
3歳ごろから子どもは自分以外の周囲の事や過去・未来などについて考えられるようになり視野が広がってきます。複雑な因果関係の理解が進むにつれて子ども自身の感情も複雑になってきます。
しかし、その複雑な感情を自分で論理的に分析・制御できる能力が大きく育ち始めるのは脳の前頭葉前野の発達が進む6歳から9歳ごろです。したがって3歳~5歳の子ども達は自分自身で説明できない複雑で厄介な感情に対して、他の年齢よりも大きないらだちを感じます。
どの「問題行動」も「根っこは同じ」
このいらだちがどのようなスタイルで表に出るかは子どもによって様々です。反抗的な言葉・人を叩くなど暴力的な行動・無口で何も話さない・消極的で何事にも手を出さない・静かに泣く・大声で泣きわめく、などです。
表面的な問題行動は子どもによって非常に様々です。一見すべてが違った問題に見えますが、この表面的にはまるで違う問題も、観点を変えれば「根っこは同じ」といえるでしょう。
表面的な症状だけに対応しようとするのではなく、根本的な原因への対応を考えるべきです。この考え方をしっかり自分のものとして使いこなせるようになると、幼児期の育児は見違えて楽になります。
「叱らない育児」を実践するための心構えと対応法
では、そんな成長途中の子どもに対して、親はどのような心構えを持って接していくべきでしょうか?
幼児期の問題行動はすべて「幼児にとって当たり前の行動」であり「不快な感情の適切な処理を身に付ける大切な学びの機会」です。子どもの行動に困る時こそ「ラッキーなチャンス発生タイム」と考え、少しでも学びを大きくすべく適切な対応を心がけてください。
幼児期にこの学びが不足するとコミュニケーション能力が適切に発達できません。
特に以下のような心構えを持って子どもと接していくと、3歳を越えてからも「叱らない育児」がうまくいくようになります。
1.似たような不快感情を、違った場面で複数回経験することを重視する
子どもは1度の経験だけで、自分の心に湧き上がる複雑な感情を理解することができません。同じような感情を複数の異なった場面で経験することによって、徐々にその感情の全体像をつかめるようになっていきます。
そのような経験をしっかり子どもに与えてあげるために「叱らない育児」を実践しているのだ、と親はしっかり認識しましょう。特に下記の行動に気をつけてください。
①頭ごなしに叱りつけないこと
②親が問題の交通整理をして、不快感情を取り払ってしまわないこと
どちらも子どもの学びのチャンスを消し去ってしまう対応だといえます。
2.子どもの感情を理解し、共感する
まだ、自分の気持ちをうまく説明できない子どもにとって、何よりもまずその感情を親に共感してもらえるということが、自身の気持ちと向かい合うためのエネルギーとなります。
そこで、親のできることとして「どうしてこういう行動をしたのか」についてヒアリングすることがおすすめです。言葉での説明がまだ苦手な子どもに対しては、普段から意識的によく観察することで理解につとめてください。
ヒアリング時の注意点としては以下が挙げられます。
◆①親が言葉を先取りしてあれこれ言わないこと
これをしてしまうと、話が真実よりも親の想像に近いものへとシフトしてしまいます。
◆②アドバイスを入れないこと
子どもが求めているのは助言ではなく共感です。無用な助言は反発心をかきたて、素直に話せなくさせてしまいます。「わが子の言葉を鵜呑みにしないこと」「語られていない事実がまだたくさんあるはず」「わが子の目にはそう見えても、実際には違う部分もあるはず」という意識は常にもってください。
3.事実の把握ができたら、子どもの感情に「言葉」を与える
ヒアリングをすると、子どもの思っていること、抱えている感情が見えてくると思います。そこで、「こうだったんだね」「こうだからこういう気持ちだったんだね」「こうしたかったんだね」と出来事や感情を言葉で語り聞かせてあげましょう。つらい気持ちに耐えたこと、我慢したことを褒めてあげるのもよいです。
このような経験を何回も何回もくり返すうちに、次第に自分の複雑な感情を自分なりの言葉で説明できる力が育ちます。そこまでの成長があって初めて、自分の感情を自分の意志でコントロールする段階への下準備ができていくのです。
まとめ:3歳からの「叱らない育児」は、子どもの自らの成長を後押しするため
いかがでしたでしょうか?
3歳までの「叱らない育児」が、子どもがまだ叱られる理由を理解できないため、親の行動を通して叱るべき機会そのものを減らす、また親が模範となる行動を見せることを主眼に置いているのに対し、3歳からの「叱らない育児」は子どもの成長に対して適切なサポートをしてあげるためにあるといえます。
子どもが「困っている時」、それは「学び時」です。子どもの問題行動には必ず理由があるので、その理由をつかんで子ども自身が乗り越えていくのを助けてあげられるとよいですね。
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