「叱る」についての重要ポイントとは?
ベビーパークでは、基本的に3歳まで(厳密にいうと精神年齢3歳まで)は「叱らない育児」を実践しています。今回は本題の「初めての叱る」の前に、まず「叱る」ということについての重要ポイントを簡略にお伝えいたします。
3歳までの子どもはしかっても効果がない
「子どもを伸ばすために叱る」のならば、子どもには「何故、叱られたのか」が確実に理解されなければなりません。しかし、平均的な子どもの発達では、精神年齢3歳頃までは物事の因果関係をほとんど理解できていません。
言葉の発達が早いお子さんだと2歳頃から非常に言葉が活発になり、まるで大人のような言葉を話すこともあるので、多くの親たちは「この子はわかっている」と誤解してしまいがちです。確かに1歳なり、2歳なり、3歳なりの理解はしていますが、それは大人が考えているのとはまったく違う「驚くほど未熟な理解」にすぎません。
「叱る育児」をする際の2つの最低条件
そして、「叱る育児」が教育的効果を持つには最低条件が2つあります。
一つめは、子どもが「物の用途」を、自分なりの言葉で説明できること。「用途」という概念の理解そのものは、比較的早い月齢から始まります。思考力の分類でいえば「受容的思考」です。ですから「食べる時に使うものはどれ?」という質問に対して、何枚かの絵の中からスプーンを選ぶことのできる子は1歳代でもいるでしょう。しかし、叱るための条件はもっと難易度が上であり、「椅子は何するもの?」「お皿は何をするもの?」などという質問に対してしっかりと「自分の言葉で」答えられなければなりません。つまり「表現的思考」ができるところまで知能が育っている必要があります。
もう一つの条件は、子どもが「物事の因果関係」を自分なりの言葉で説明できるということです。ここでも知能の概念領域における「表現的思考」の発達が重要になってきます。例えば、「水の入っているコップにぶつかって、コップを倒したらどうなる?」というような質問に「水がこぼれる」と正しく回答できるところまで概念理解が進んでいて、かつ「水がこぼれたら飲めなくなった人は悲しい」「こぼれた床を自分では上手に拭けない。お母さんに余計な仕事を作ってしまった」など、自分の行動が他の人にどういう影響を与えたのかも、正しく理解できる必要があります。
「お母さんが怒ったからきっとこれは悪いこと」という曖昧な認識ではなく、子どもなりのシンプルな理解でよいので、因果関係について子ども自身が納得できることが大切なのです。この2つが達成されないうちは「叱る育児」に意味はなく、「恐怖」や「不快」という感情をより強く育ててしまう、という育児上の害を与えるだけになってしまいます。
また、もう一つ大切な事は、「叱る相手と叱られる相手の間に、強い信頼関係、愛着の関係が育っていること」です。
「初めて叱る」タイミングと注意事項
ではここから、本題の「初めての叱る」について具体的に解説いたします。
「叱る」は高度な技術、感情的にならない
教育、すなわち「人間を育てる」ためには、いろいろな技、テクニックがあり、「褒める」、「叱る」、「手本を見せる」ことも技の一つです。「感動させる」というのもテクニックの一つと言えます。
しかし、その中でも「叱る」という方法は、親や教師の教育武器の中でも威力が凄まじく強いのです。そして、「叱る」という技を使うためには、前述の通り叱られる方に高度な理解力が備わっている必要があり、叱る方も「叱り方」を充分に学んでいなければなりません。
そうでないと、それはしつけではなく、親のイライラや不満をぶつけているだけになってしまいます。そのように「しつけのための叱り方」というのは高度な技術であり、そう簡単ではありません。また、子どもには「叱られる」という強いエネルギーを自分の成長の糧にできるような心の強い子に育ってもらうため、今から必要な準備を少しずつ進めていきましょう。
初めて「叱る」シチュエーション
さて、精神年齢が3歳を過ぎ、知能の発達がかなり進んでくると、お子さんの心情の中に「お父さん・お母さんはどこまで許してくれるのだろう」という疑問が芽生え始めます。そして、それを試す行動に出る日がくるのです。
それはある日突然やってきます。そして、その時に適切な方法で叱ると親の本気が子どもにもしっかり伝わり精神面での大きな学びになるので、そのチャンスがきた時に活かせるようぜひここからの解説を身に付け、今から備えておいてください。
まず、明らかにお子さんがお母さんを試している時というのは、叱っても叱っても言うことを聞かず、たいていのお母さんはとても困ってしまいます。周囲の人の目も気になるし、子どもは困った行動をやめる様子もありません。
望ましくない叱り方と正しい叱り方
このような時のお母さんの叱り方は2種類に大別されます。
一つは弱めの声で何度も「ダメよ。やめなさい。」と声掛けを続けるタイプです。もう一つは少しヒステリックにガミガミ、クドクドと怒り続けるタイプといえます。
実は本当はどちらも望ましくありません。人間の心は「変化」に対して大きく反応します。ですから同じ調子で叱り続けてもお子さんにとってそれは変化にはならず、やがて次第にお母さんの叱り口調に慣れてしまいまったく効果がなくなってしまうのです。
弱めの叱り声やヒステリックなガミガミは、子どもの心に伝わりません。本当にその行動をやめさせたかったら、言葉などではなく体をはって止めるべきなのです。そうすることで親の本気が伝わります。
「初めて叱る」時の具体的方法
それでは、もう十分に知能発達が進み理解力も育っている子が、明らかにお母さんを試すように、困った行動をとり続けた場合の、お子さんを叱る具体的な方法をお伝えいたします。
まずは体をはって子どもの行動を止め、言葉で注意する
まずは、体をはってお子さんの行動を止め、言葉で注意をします。走り回るなら抱きとめて、手いたずらするならばその手を押さえて、子どもの目を真正面から見つめ、穏やかに注意します。優しく言ってもきかないならば、少し悲しそうな声色で、その行動によってどのような困ったことが起こっているか、そして誰が心を痛めているかを、真剣に訴えます。
それでやめればそれで良しです。普段からガミガミ叱られる経験が少なく、充分に知能や概念の発達が進んでいるお子さんは、たいていはここでやめるものです。しかし、お子さんの中に「自分のわがままはどこまで通用するのか」「お母さん、お父さんはどこまで許してくれるのか」を測ろうとする心の動きがある時には、お母さんがここまで優しく悲しみを伝えてみても困った行動をやめません。笑いながら悪ふざけを続けることでしょう。この状態が生じたら、親の絶対的な強さをお子さんの心に植え付ける大チャンスです。
目線の高さを合わせて厳しい顔と声で、名前を怒鳴りつける
叱り方は簡単です。ふざけるわが子の両肩をガッシリとつかみ、目の高さを合わせて、お母さんにとって可能な一番怖い顔をしてお子さんの名前を怒鳴りつけて下さい。大輝くんだとしたら「大輝!」という感じです。普段は「大ちゃん」とか「大くん」などニックネームで呼んでいたとしても、この時ばかりは必ず名前を呼び捨てにして下さい。
叱るのはこれだけで十分です。なぜなら、ここに至るまでにお子さんはなぜ自分が叱られるのかをよく理解しているからです。すなわち、良くない行動であることや、お母さんや友達が嫌がっていることがわかっている上であえて行い、そしてお母さんはそれを何度も優しくやめて欲しいと訴えていたのですから。ぜひお子さんを泣かせるつもりで、最高に怖い顔で怒ってください。
追い打ちをかけず優しく抱きしめてあげる
普段、叱っていなければいないほど、いつも優しいお母さんが烈火のごとく怒ったことにショックを受けて、ほとんどの子は泣きだします。そうなれば、もう追い打ちをかけるような言葉は必要ありません。優しく抱きしめてあげてください。嫌がって逃げ出そうとするならば、お子さんがお母さんの腕を振り払えないように強く抱きしめてください。
この時に絶対に逃がしてはいけません。暴れる子もやがておとなしくなります。そして、「今、大くんはとても綺麗な涙を流しているよ。どうして怒られたのか大くんは知ってるよね。お利口さんだものね。大くんの涙が綺麗な心の証拠だからお母さんはもうこれ以上怒らないよ。本当はすごく良い子なんだよね」などと、語りかけます。
ここで追い打ちをかけて叱っても、不快感情を募らせるだけで心を成長させる効果はなく、厳しく叱ったあとのフォローこそが教育においては肝心です。「あなたが本当は良い子だとお母さんはよく知っているよ」「何が悪いことか、あなたはちゃんと知っているんだよね」「お母さんはあなたを信頼しているよ」「いつだってとても愛しているよ」「あなたは本当はとても良い子よ」というメッセージを伝えます。
非日常的なシーンでのメッセージは深く心に残る
このような非日常的なシチュエーションで受け取ったメッセージは、心に深く刷り込まれやすいのです。お母さんの愛情と信頼を再確認すると共に、「お母さんは悪いことは絶対に許してくれないのだ」という新たな認識がしっかりと植え付けられていきます。
まとめ:「叱る」時は感情的にならず上手にコントロールして使う
このように「叱る」という方法は上手に使えば、相手に教育を施す武器の一つになります。武器ですから感情的に振り回してはいけません。それではむやみに相手を傷つけてしまうだけです。
また感情を押し殺せ、という意味でもありません。親が自分の感情を偽ってしまっては、本気や真心という尊い感情が相手に伝わらなくなってしまいます。熱い感情はそのまま保ちながら、自分の感情表現をコントロールしましょう。状況の改善のため、感情豊かな自分の心が表情を精密にコントロールして3Dディスプレイに自分の感情を映し出している、というイメージで考えるとよいでしょう。
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