「叱らずにしつける」事をおすすめする理由
このコラムサイトを運営しているベビーパークが推奨しているのは「叱らないこと」ではなく「叱らない育児」です。小さい子どもが引き起こしたトラブルに直面した時、叱ったり怒ったりすることで一時的にその場をしのぐ事はできますが、それは本当に「その場限り」の解決策でしかなく、子どもの心の成長を長期的な視点から見た場合には、良い効果よりも悪い影響を強く与えてしまっていることが多いのです。
では叱らずにどうやって躾ければいいのでしょうか? 子どもが引き起こすトラブルは本当に様々な形で現れ、時と場合のシチュエーションも千差万別です。そのため、こればかりはご自身の経験を通し、数多くの失敗や成功をくり返して少しでも効果的な方法を探していくしかないのですが、今回はより多くの失敗や成功の経験の中から見つけた、成功しやすい方法をご紹介いたします。
まず、子どものイヤイヤがとても激しかったり、長時間大声で泣きわめくことをやめなかったり、という時は、過去に「騒ぐことで欲求が通った」と経験し「泣けばお母さんは聞いてくれる」と子どもの脳が学習してしまっているケースがほとんどです。そこで、今回はよくある2つのシチュエーション例を用いて詳しく説明いたします。
ケース1:チャイルドシートを嫌がる
チャイルドシートを嫌がって大泣きする子どもは大勢います。しかし実はそれは当然のことです。人間を含めてすべての動物は「動けないように拘束されること」を本能的に凄まじく嫌います。これは脳に刻み込まれた本能です。
また、野生動物は自分の運動能力を超えるような危険な行動はしないものですが、人間だけが道具の力を借りて、自分の能力を超える行動をします。例えば、落ちたら怪我では済まないような高いところに登ったり、生身の体では危険な速度で移動したり、です。大人はその高さや速度がいかに危険か十分に理解しているので、安全を守るためのベルトやガードの必要性がわかりますが、幼児にはそれが本当の意味では理解できません。
子どもはこれまでの経験の範囲内での危険しか理解できない
もちろん子どもも「チャイルドシートに乗らないと危ない」ということは知っているのですが、小さい子どもはこれまで自分が経験した範囲内の危険しか理解できないので、子どもにとって理解可能な危険の最大値は「これまでに経験した一番痛いこと」でしかないのです。
大半の2歳の子どもは「痛いこと」といえば、転んだり、椅子から落ちたりしたことくらいしか経験がないのではないでしょうか。お母さんがどれだけ厳しく「車は危ないんだよ!死んじゃうんだよ!」と叱ってみたところで、子どもが推測できる最高の危険や痛みは「道で転んだこと」程度が精いっぱいなのです。
子どもに無理に危険性を教えることは逆効果
では、車がどれだけ危険かということをわからせればいいのかというと、答えはノーです。幼児期にはまだ「命に関わるほどの危険」について詳しく教える必要はありません。子どもはまだ自分の身の回りが世界のすべてのように感じています。地震や火事、津波などの被災映像やその他子どもが強い恐怖を感じるような出来事を教えると、世界とはそういう恐ろしいもので満ちた場所なのだと思い込んでしまい、外の世界と接触することを極端に嫌がるようになる場合があります。
余計なことを言わず問答無用でチャイルドシートに乗せてしまう
よって、チャイルドシートに関するお母様の心得は、もう「問答無用で乗せること」、これに尽きます。泣いても騒いでもわめいても一切気にしないことが鉄則です。優しい笑顔をキープしつつ、力づくでお子さんをシートに固定してしまって下さい。
この時に、余計な言葉はなるべく言わないようにしましょう。なぜならば、言えば言うほどその文章に出てきたことを、お子さんは嫌いになるのです。チャイルドシートや車という単語を言ってしまったら「チャイルドシート」や「車」を嫌いになります。
またこの時、お子さんが泣くようなら泣かせてください。泣き疲れたら泣き止みますし、疲れないならば放っておいて大丈夫です。ここで大切なポイントは「泣いても無駄なのだ」という事実を子どもの意識に刷りこむことなのです。
ごほうびは与えず、「泣いても無駄だ」と悟らせることが大切
一番よくない対応は、泣き止ませようとして、色々なオモチャを用意したり、飲み物やお菓子を与えてみたり、DVDを用意したり等と、色々手をかけてしまうことです。
この時の子どもの本当の欲求は「シートから降りたい」なので、代わりの要求をいくつ叶えてもらっても不快感は消えず、シートから降りられない不満を紛らわせるために「喉がかわいた」「DVDつけて」と次から次へと要求を続けるでしょう。
お母さんが色々な方法を試せば試すほど、子どもの「要求バリエーション」は増え、結果的にお母さんは自分の苦労を増やしてしまうことになるのです。子どもが、「泣いても無駄なのだ」と自ら悟るまでは、お母さんがどれだけなだめてもあまり意味がないので、なだめる必要もありません。
それよりも運転に集中することが大切です。泣き声が気になって運転に集中できないのは最も危険ですので、「泣き声を気にせず運転に集中する」という強い意志をもちましょう。
子どもは新しい習慣にすぐ順応できる
自分自身の意識を運転に集中させるのは、お子さんを泣き止ませることよりも簡単です。なお、これまでチャイルドシートの泣き止ませ対策を色々試してきた方ほど、「泣けばお母さんが相手をしてくれたり、飲み物をくれるために停車してくれる」と学習してしまっているので、子どもが泣き続ける時間は長いかもしれませんが、心配ありません。
実は小さな子どもは「忘れっぽい」というすばらしい長所を持っています。今までは泣けばお母さんがいろいろ工夫してくれたかもしれませんが、これからは「泣いても騒いでも状況は何も変わらない」という新しい習慣を徹底しましょう。そのうちにこれまでの手厚いサービスも忘れてくれ、チャイルドシートでも騒がない子になってくれます。
車移動中の楽しみは「耳から入るもの」にする
そして、車移動中の楽しみは「耳から入るもの」が良いでしょう。学習効果の面で望ましいのは「視覚と聴覚が連動している状態」なので、もしお父さんが運転する際は、お母さんがお子さんの横で移りゆく景色について話してあげるのは大変良い方法です。
しかし、子どもをチャイルドシートに乗せてお母さん一人で車移動という状況の時には、DVDではなくてCDをどんどん活用してください。子どもがよく知っている童謡などのCDをかけ流すだけでも良いし、お母さんが歌ってあげればなお良いです。泣いてばかりでCDなんか全然聞いていないように見えるかもしれないですが、車移動のたびに習慣づけていけばやがては車内で好きな音楽を楽しむことができるようになります。
目的地に着いた時に褒めて抱きしめてあげる
そして、目的地に到着した時こそ「チャイルドシート」という言葉を使いましょう。「チャイルドシートに座れて偉かったわね」「『シートに座る』が上手だったわね~!」と褒めながらたくさん抱きしめてあげれば、チャイルドシートや車という単語は「嬉しい気持ち」を思い起こさせる言葉の鍵になります。
ケース2:スーパーで買って欲しいとねだる時
では、上述の内容を違った場面に応用してみましょう。買い物中に「これが欲しい」と大泣きして騒ぐという場面です。
悪習慣を取りのぞくために、おねだりされたものは絶対にその場では買わない
まずは、悪習慣を取りのぞくことが重要なので、「買い物途中におねだりしたものを買ってもらえるという経験を与えない」ことが大切です。子どもが泣いても騒いでも絶対に折れないで、何があっても買わないようにしましょう。
これまでに買い与えてしまったことが一度でもある場合は、床に寝転がったり大泣きするかもしれません。もし、これ以上買い物は無理!と判断したら、子どもを抱きかかえて本当に必要最低限のものだけ購入してその日は帰りましょう。
お店に行くのが大変だからと行く回数を減らす方が多いのですが、それだと店内に滞在する時間が長くなって子どもが騒ぐ可能性が高まります。
それよりも買い物数を減らし、店内で過ごす時間を短くする方が効果的です。その分、買い物回数が増えますが、それは子どもにとって「買い物時間に良い態度で過ごす経験をくり返す」というよい教育効果を与えます。
誘惑の多いエリアには子どもと一緒に行かない
また、子どもが一緒の時には誘惑の多いエリアに行かないこともポイントです。野菜・果物・魚・肉・乳製品など以外のコーナーは極力行かないようにします。そういう品は大抵お店の入り口から出口までの一番外周に配置されているので、子どもと一緒の時には店内内側の棚エリアにはできるだけ入らないようにするのが良いでしょう。
そして、子どもがねだりそうなお菓子やジュース類は、子どもが見ていない時に、絶対にバレないようこっそり買う工夫をしましょう。休日など、お父さんが一緒に買い物に来るときに、お父さんに子どもを引きつけておいてもらってお母さんが素早く買うのも方法です。それが難しいご家庭はスーパーの宅配を利用してみてもよいでしょう。
おねだりされたものは後日別の機会に与える
なお、おねだりしたものを一切買わないというわけではありません。重要なのは「おねだりされたその日、その場、では絶対に買わない」ということです。おねだりの言葉は「子どもが今、何を欲しがっているのかを知る貴重な情報」ととらえて覚えておき、別の機会にこっそり買って家に用意しておき、何か良いことをした時にごほうびとしてあげるのもよい方法です。「泣く・騒ぐという方法では要求は通らないんだ」という認識が子どもの中にしっかり刷りこまれれば、スーパーで騒ぐことはなくなります。
イヤイヤの時は余計なことは子どもに言わないようにする
また、子どもの感情が不機嫌な時には余計なことを言わないようにしましょう。先述の通り、小さい子どもは不愉快な感情の時に耳にしたものや目にしたものを嫌いになる傾向があるので、余計な言葉を口にするほど子どものイヤイヤを引き起こす鍵が増えてしまいます。笑顔で毅然と「騒いでも要求は通らない」という経験を与えましょう。
店内を走り回る場合は、必ず手をつないで離さない
スーパーマーケットでの他のトラブルといえば、「店内を走り回る」というものもありますが、これはチャイルドシートでいえば「力づくで座らせる」に相当する解決がベストです。
2歳児の力に負ける大人はいませんので、店内で走り回る可能性のある子どもの場合、お母さんが必ず手をつないで歩いてください。駐車場などの時と同様に何があっても負けてはいけません。この時は日頃から「お店はママと手・お店はママと手」といった感じで、ごくわずかの単語で子どもが理解できる約束事をインプットし続けます。そして子どもが手をつながないようならば、しばらくの間お店に連れていくことをやめましょう。
子どもに選択肢を与える場合の方法
子どもがある程度話を理解できるならば別の選択肢を与えてあげるのもよい方法で、一番の選択肢は「手をつながないならばカートに乗ること」です。「子どもがカートを嫌がり泣き騒ぐ」ということもとても多い悩みですが、この場合も「カートに乗らないならば、絶対にお母さんと手をつなぐ」「手をつながないならカートに乗る」という選択肢から選ばせます。
アメとムチを与える場合、アメはほどほどのごほうびに抑える
また、このような目先の目標を達成させるためならば、アメとムチを使っても構いません。例えば「最後まで静かにできたら、ミカンを買おうね」など、この場合の「アメ」、つまりごほうびはお菓子やオモチャにしないことがコツです。お菓子やオモチャなどの大きすぎる誘惑は「買ってくれなかったら静かにしない」という悪習慣を育ててしまうので、果物など「ほどほどに嬉しい、ほどほどのごほうび」を考えてみてください。
「ムチ」にあたるのは子どもがその時に嫌がる事柄です。あまりよい方法ではありませんが、「静かにできないなら、お母さんが買ってくる間車のチャイルドシートで一人で待っててね。嫌?だったらお母さんと手をつないでね」という感じで、もちろん実際にはそのような危険な真似はしてはいけませんが、どうしようもない時にギリギリこの程度のトークまでは使ってもOKだろう、という下限の目安と思ってください。
まとめ:各ケースのしつけに共通する考え方を理解しよう
いかがでしたでしょうか?
どちらのケースであれ、
- その場を収めるために叱ったり、お菓子やオモチャで子どもを釣ることは逆効果である
- 子どもの機嫌が悪い間は余計なことは言わない。その言葉が新たなイヤイヤの引き金になる
- 笑顔で応じつつも毅然とした態度で子どもに接する
- 目的を達成したら、たくさん褒めて抱きしめてあげる
といった共通点が見えてきたかと思います。
今回の思考方法は、やがて子どもが成長して保育園や幼稚園に入ってからでも応用できることばかりですので、車も買い物も困ってない方もぜひ身に付けてくださいね。
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