子どもの好き嫌いは本能的なもので心配はいらない
「食事」「食べること」というのは、生物が生きていくためのもっとも基本的で重要な事柄の一つです。正しい食事が健康な体の正しいありかたを作る、といっても過言ではありません。
そして、育児相談で常に上位にあるのが「子どもの好き嫌いで困っています」という悩みですが、この悩みを解決するには「現在の栄養学常識」を根底から問いなおすことが必要です。まず「子どもの好き嫌いが困る」という思いこみの鎖を断ち切っていきましょう。
子どもの味覚は非常に鋭敏なもの
味を感じるのは舌にある味蕾(みらい)という部分ですが、大人の味蕾が約6千個から、舌の鋭敏なソムリエのような人でも約9千個程なのに対し、赤ちゃんの味蕾は約1万2千個もあります。また、なんと胎児期の赤ちゃんの味蕾は、顔表面から胸のあたりまで広範囲に拡がっているのです。
この時期の赤ちゃんは羊水に溶けた栄養分を口から飲んでいますが、妊婦さんが食事をした後に採取した羊水からは母体が食べたもののニオイがします。そのため、母親がタバコやアルコール、または苦い食物を摂取した場合、赤ちゃんは顔表面にある味蕾で、飲む前に味を感じ取って羊水を口に入れなくなります。
そのため、喫煙や飲酒習慣のある妊婦さんの場合、赤ちゃんの食欲が制限され低体重で産まれることが多く、お胎のなかですでに病気になっていたり、死産のリスクも高まると言われています。
このように、赤ちゃんは胎児期からすでに非常に鋭敏な味覚を備えて産まれてくるので、0歳代に味覚を育てる必要は少しもなく、むしろ0歳代は、あれこれ不自然な食品を食べさせることで、この優れた味覚を鈍感にしてしまう方が問題なのです。
味覚は命を守る「門番」
「食べる」という行為をおこなう時に大切な事は、「生命活動のエネルギーを得る」と同時に「危険なものを体内に取り入れない」の2つです。
日常的に「毒のあるもの」といっても触っただけで命に関わるものはほとんどありませんが、「飲み込んだら命に関わる」ものはたくさんあります。野生の動物の日々の仕事は正に「食べ物を得る事」ですから、食べ物探しをしながらも「危険なものを食べない」事は自分の命そのものを守る事につながります。
子どもの好む味と嫌う味の理由
さて、子どもが好む味、嫌う味ははっきりしており、好むのは「甘み」「旨み」「脂肪」、嫌うのは「酸味」「苦み」です。
甘みは「果物や野菜の完熟」、脂は「魚や動物の旬」の証。
どちらも自然界では安心・安全・高栄養の印です。また旨みはタンパク質を構成するアミノ酸や核酸系のものに多く含まれています。グルタミン酸やイノシン酸などですね。
対して酸味は「腐敗」の証、苦みは「毒」のサインである場合が多いです。
ですから、大人よりも1.5倍~2倍も味覚の鋭敏な乳幼児が、酸っぱいもの、苦いものを嫌って食べたがらないのは当然なのです。
緑の野菜は苦みが多く無理に食べさせなくてよい
「子どもが食事を残す」「好き嫌いが多い」という相談も、ほとんど9割が「緑の野菜を食べない」という悩みです。
植物が甘くて美味しい実をつけるのは、他の動物に食べてもらって種子を遠くまで運び、繁殖するためです。ということは、まだ種子が完熟する前に食べられてしまっては困るので、熟する前の青い実は、主に植物由来の神経毒の総称“アルカロイド”を含む場合が多いのです。
毒と薬は表裏一体ですから、使い方によっては薬になる場合もあります。トリカブトの毒、ジャガイモの芽のソラニン、モルヒネやニコチン、緑茶・紅茶・コーヒーのカフェインもアルカロイドです。
実は真っ赤なトマトも完熟前にはトマチンというアルカロイドを含んでいますが、赤くなるとほとんど消えます。ピーマンも完熟すれば赤くなり甘みを持ちますが、緑色のうちはアルカロイド系の苦みがあります。人体に害を与えるほどではありませんが、コーヒーと同じく「苦みのわかる大人」の食べ物であり、子どもが嫌うのは当たり前、無理に食べさせる必要はないといえます。
叱りつけてむりやり食べさせるかどうか悩むよりも、むしろ「我が子の『危険察知能力』はまだまだ鋭敏にはたらいているな」と喜ぶべきところなのです。
「自然界に存在しない強さ」の甘み・油脂は与えない
先述の通り「子どもの味覚は非常に鋭敏」であり、「体に必要な食べ物と自分の体にとっての適量を脳が適切に判断」しますから、本来ならば「食べたいものを食べたいだけ」与えておけば、子どもの健康や栄養に問題が起こることはないはずなのですが、現在の食料事情ではそうはいきません。
「甘み」と「脂(あぶら)」は安全&高カロリーの証ですから、満腹中枢も他の味覚と別に判断します。そしてそれが「自然界に当たり前に存在する食材」なら問題はないのですが、「自然界に存在しない甘み」は脳の適正な判断を狂わせます。
スーパーに並ぶ既製品は注意が必要!
実はスーパーに並ぶ「食品」は、ほとんどすべてが「甘みや油脂」を強調して作られています。このような「既成食品の強烈で人工的な味」に慣らされてしまうと、子どもの味覚はどんどん鈍感になっていき「自然界に存在しない強い味」しか美味しいと感じなくなってしまうのです。
菓子類や、出来合いのお総菜も、レトルトの合わせ調味料、から揚げ粉や「~~の素」「○○鍋のスープ」「各種パスタソース」なども、みんなそうです。
ほとんどの品に増粘多糖類やキサンタンガム、脱脂粉乳、加糖脱脂れん乳、カラメル色素等が入っており、この不自然な味で子ども達が育っているのならば、好き嫌いが増えるのも当然なのです。
そもそも「白砂糖」自体が自然界には存在しない強烈な甘みです。自然界の甘さの上限を日本で言うならば「完熟した柿の甘み」でしょう。
「素材の味」を「昔ながらの伝統的な製法で作られた調味料」できちんと料理した味を、幼い味覚には教えていきたいものです。
具体的に食育を実践するためのアドバイス
ではここで、具体的に実践するためのアドバイスをお伝えいたします。ご家庭によって、難易度は様々だと思いますので、とても難しいと感じる方は、無理せずできるところから一つずつトライしてくださいね。もうすでにすべて実践しているという方は、ぜひお子さんが成長なさってもそのまま継続なさってください。
子どもの好き嫌いを気にすることを一切やめる
既にお話したとおり、子どもの好き嫌いは本能にもとづいたごく自然なものなので、むりやり改めたり強制する必要はありません。心配になる親心はよくわかりますが、思いきって子どもの好き嫌いを気にする事自体をやめてしまいましょう。
野菜からの栄養不足が心配でしたら、ブロッコリーかほうれん草を1日の食事のどこかで取り入れれば十分です。もし、子どもがブロッコリーやほうれん草を嫌う場合は、調理時間が短いことが考えられます。3分間は茹でるようにして、かなり柔らかめにしてあげましょう。
子どもの飲み物は「水」が一番と心得て、お茶よりも水を与える
麦茶程度ならば2歳頃から楽しませてもいいと思いますが、麦茶はタンパク質を多く含みますので0歳代はまだ不要です。やはり水に優るものはありません。浄水器を通した水、または購入する場合はミネラルの少ない軟水を選びましょう。
水分補給させたいのにお茶しかない、という場合は神経質になる必要はありません。水分補給させることのほうが大切ですからお茶を飲ませてあげましょう。
市販食品を購入する時には余計なものが少ない品を選ぶ
既製品は添加物など「自然界に存在しない強い味」が多く、なるべく子どもには与えないほうがよいのは先述のとおりですが、実際にはどうしても市販食品に頼るシーンもあると思います。その際は、成分表示をみてなるべく天然の素材を中心にしたものを選ぶように心がけましょう。
お母さんが子ども用の菓子類を持ち歩く習慣をやめる
子どもがぐずったり泣いたりした時の対策として、お菓子類を持ち歩いているお母さんもいると思いますが、食育の観点からは望ましくはありません。
どうしても必要な場面でもなるべく自然の甘みをもとにしたものを与えるようにしましょう。
「ダシの素」などの使用を極力やめる
ご家庭でのみそ汁や煮物など、市販の「ダシの素」を使用している方も多いと思いますが、小さい子どもに与えるのは控えたい食品になります。とはいえ和風なら「ダシの素」、洋風なら「コンソメ」と、日々の食事作りのなかで当たり前に使っている家庭も多く、共働きなど昨今の家庭事情を考えるとやめるのがなかなか難しい部分です。
いきなりやめるのが難しいご家庭は、まずは味噌汁を煮干しで作るようにしてみましょう。味が物足りない時には鰹節をダシパックなどに入れて一緒に煮立てると旨みが増します。
また、市販の和風だしなどでも無添加のものも販売されていますので、そちらから取り入れてみるのもよいかもしれません。
まとめ:できることから一つ一つ実践することが大切
現代の生活で、のぞましい食育を完全に実践するのは難しいものです。いきなりすべてを始めようとするとお母さんのストレスがたまって、子育てにとっても逆効果になりかねません。
とはいえ、子どもの好き嫌いに悩むくらいなら、なるべく自然に存在する食材で好きなものを与えるほうが楽に感じるかもしれません。
無理なく少しずつ食事の環境を変えて、子どもだけでなく親も楽しんで食事ができるようになる事が大切です。できる事から一つ一つ実践して習慣にしていけるとよいですね。
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