睡眠の種類と発達段階
睡眠がもたらす、子どもの成長に関わるホルモンへの影響について解説します。
幼児は大体1日10時間眠ります。実は、眠りを夜に1回だけ集中して持てるのは生物の中でも人間だけの高等性です。魚類・両棲類・爬虫類は、通常1日に数回眠る「多相性睡眠」といわれる状態で眠ります。0歳期の赤ちゃんもこの発達段階にあります。
高度に脳が進化した鳥類と哺乳類のみが「眠り」と「目覚め」を明確に分化させ、レム睡眠と呼ばれる睡眠状態を持ちます。幼児はこの発達段階にあります。
レム睡眠時は、体は深く眠っている状態なのに大脳はよくはたらいていて、代謝作用も活発です。「夢を見る眠り」であり、脳の急速な成長期である胎児期から3歳ごろまではレム睡眠の時間が非常に多くなっています。
そうして脳を発達させながら、昼寝の回数を少しずつ減らしていき、多相性睡眠から1日1回夜に集中して眠る「単相性睡眠」へと進化していきます。
ですから、3歳未満の子どもが「夜にどうしても寝ない」「夜中に何度も起きる」「朝早く起きられない」としても、睡眠のサイクルが確立しておらず、まだ「多相性睡眠」の段階にいるだけなので心配する必要はありません。「朝の5~6時ごろから光を浴びる」事を継続していけば、いずれ適切な時間にきちんと起床・就寝できるようになっていきます。
人間の眠りのリズムの5段階
人間の眠りのリズムには5段階あります。健康面でもそれらが睡眠時に適切に現れることは大切ですが、幼い子どもにとっては健康のみならず、成長に関わる大変重要な問題となります。
簡単にその特徴を確認していきます。
1.ノンレム睡眠1段階
就眠の際のごく浅い眠りです。すでに眠っていながら本人はまだ眠っていないと思っています。音も話し声も聞こえ、物事を考えることもできます。子どもは5分以内、大人は7分以内で通過することが望ましいとされています。夜中に現れると、実際には眠っていても「全然眠れなかった」と思いがちになり、睡眠不足感が強く残ります。
2.ノンレム睡眠2段階
比較的浅い眠りですが、眠りの中では一番多く出現します。大人は全体の睡眠の半分がこのノンレム睡眠2段階にあります。起きている時間に消費したものの回復・補充に使われる眠りと考えられています。
3.ノンレム睡眠3段階 & 4.ノンレム睡眠4段階
人間独特の深い眠りです。前頭葉と視床のはたらきを高めます。前頭葉では高度な知性である社会性・感情制御・言語・創造性を豊かに育てます。言い換えると、豊かな人格や意思力、元気に働く力の育ちを支える眠りです。また視床のはたらきが高まり、認知力が向上します。
この眠りの状態から突然起こされると大変目覚めが悪くなり、不快感が残ります。
5.レム睡眠(逆説睡眠)
眼球が速く動く眠りです。大脳が活発に働き、脳の作り、はたらき、秩序を育てるといわれています。実は3歳ごろまでは睡眠時間の半分がこの段階なのに対し、年齢が上がるほど減っていき、成人では全睡眠時間の5分の1以下になってしまいます。
乳幼児は起きている時間に「新しい経験」をすると、このレム睡眠が非常に多く出現し、その間に脳が作られていると考えられます。
小さな子どもはエネルギーのかたまりです。疲れを感じる以前に、回復が必要な時には場所がどこだろうとコテンと眠ってしまいます。そして起きた時には、また完全復活しているのです。ですから、子どもが夜早く寝るようにと日中たくさん体を使わせてみても、実はあまり効果が得られないことが多くあります。
子どもをたくさん寝かせるためには、「新しいことをたくさん体験する」「これまでに経験したことのない出来事を脳が感じる」ことが大切です。何回もおこなっている遊びであっても、新しいことができるようになった時には脳がよく成長するので、よいレム睡眠が訪れます。
子どもの成長につながる「お昼寝」のさせ方
さて、ここでとても重要になってくるのが「お昼寝」です。
お昼寝は午前中にさせて、レム睡眠を活用する
幼児は午前中にレム睡眠が出やすく、午後はノンレム睡眠が出やすい傾向にあります。ですから、朝6時頃に起床したら午前中に90分程、集中力を要する知的な遊びを行うと9時~13時頃の間に1時間程のレム睡眠が訪れるものです。この時間帯に「お昼寝」をすると、1時間程で済み、お昼寝からの目覚めも非常にスッキリして体に活力が溢れます。
しかし、午後にお昼寝をするとノンレム睡眠の3~4段階が出やすくなります。眠りが深いのでお昼寝も2時間程度になりがちです。目覚めも悪く、午後に活発な遊びをしたがらなくなり、夜もなかなか眠くならないので就寝が遅くなりがちです。
13時までにお昼寝をすると、体温が一日で一番高い午後の時間に体を使ってたっぷり遊ぶことができるので、身体の発達も活発になります。また、十分な時間が確保できるため遊びの内容も豊かになり、社会性も促されやすくなります。
さらには、就寝までの時間も長いため寝付きが良くなり、眠りのリズムも優れます。子どものお昼寝が1回になったら、13時前に1時間程になるよう、生活スケジュールを調整することが重要といえます。
寝ている子どもを起こすコツ
習い事などがお昼寝の時間と重なって不機嫌になってしまう場合は、ノンレム睡眠3~4段階が出現していると考えられます。夜中のホルモン分泌を最適にするためには、いっそ起こしてしまったほうがよいこともあります。
起こす際のコツとして、赤ちゃんの脳は落下感や落下時の浮遊感を感じるとパッと目覚めるため、脇を抱き抱えて10cmくらいの落下感を与える方法が挙げられます。
この時、事前にお子さまが興味を持ちそうな楽しい教材を近くに用意しておくことが重要です。落下感を訴えて泣き出してしまう前に、関心を新しい学びに向けてしまうのです。
もしも、この方法を数回やっても起きない場合は、何かよい刺激に出会ってレム睡眠で脳が育っている最中であるため、邪魔せず寝かしておきましょう。
時間帯別:子どもの睡眠中に脳内で起こっていること
では、子どもの睡眠中に脳の中で何が起こっているのか、時間を追って説明します。
8時ごろに就寝すると、眠ってまもなく日中よく使ったところを中心に全身に栄養素が送られます。
深夜12時ごろにノンレム睡眠3~4段階の深い眠りが現れると、成長ホルモンの分泌がピークになります。また、下垂体後葉から分泌されるバソプレッシンが体内水分を調節し、おねしょをしなくなっていきます。
深夜12時ごろ以降、松果体からのメラトニン分泌が始まり6時間程継続されます。これが視床下部という大脳の要に当たる脳のはたらきを調整します。視床下部には自律神経や情緒の働きの中枢が、視床叉上核には体内時計の仕組みがあり、これらのはたらきは大脳全体の育ち、体全体の育ちに影響します。
午前2時ごろに脳下垂体からACTHというホルモン分泌が始まります。これは学習力を高め、意欲を起こし、集中力・注意力を盛んにします。さらに副腎皮質を刺激してコルチゾールというホルモンを分泌します。コルチゾールは、「脂肪」やブドウ糖のかたまりである「グリコーゲン」を代謝し、睡眠中の食事代わりにします。これによって、夜中に食事をしなくても心臓などにエネルギーが送られ、生命活動は維持されます。このサイクルが完成するまでは夜中の授乳が必要であり、できれば2歳ごろまでは飲ませてあげるとよいと考えられています。
そして、コルチゾールの作ったエネルギーが切れる前に朝食をしっかり食べてブドウ糖の補給をすることが、午前中を元気よく過ごすためには不可欠です。コルチゾールの分泌が高揚する時間と平行してレム睡眠が断続的に現れ、脳代謝を高め、記憶を整理し、起きた後の頭のはたらきをよくします。
朝5時~5時半ごろから太陽光を浴びつつまどろんでいると、6時にはスッキリと自律起床できるのです。
またこのようなリズムで睡眠を取ると、午前6時ごろにβエンドルフィンという脳内ホルモンが分泌されます。これは爽快感や幸福感をもたらします。毎朝、日々の生活の楽しさや面白さ、家族の愛情に包まれる温かさを感じて、幸せだと思う習慣が育まれていきます。登校拒否児はこのβエンドルフィンの分泌が午前中に最も低い数値になっている傾向が強いというデータもあります。
まとめ:適切な睡眠が子どもの【体(PQ)、知能(IQ)、心(EQ)】を育てる
このように、睡眠のリズムを整えることが成長に必要なホルモン分泌を十分に促し、脳のはたらきを最大限に活かすこと、そして適切な睡眠は「健康」を維持し、「知能」を高め、「情緒」を安定させることが確認できます。すなわち、生体リズムに適した正しい眠りは、体(PQ)、知能(IQ)、心(EQ)のすべてを最高に育てることに直結しているといえるのです。
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