37.0℃は発熱でない?!
保育園や幼稚園では、子どもの体温が37.0℃または37.5℃以上の時に預かってもらえないケースがほとんどです。予防接種もガイドラインで37.5℃以上は接種できないことになっているため、37.0℃程度でも接種をお断りしてしまう医療機関もあるようです。ですから、なんとなく37.0℃以上が発熱の基準、だと考えている人が多いのではないでしょうか。
実はこれは、水銀体温計が主流だった時代(1980年ごろ)に、体温計の37.0℃が赤い文字になっていたことによって広まった誤解なのです。体温計製造メーカーは37.0℃を平均的な平熱という意味で色を変えていたのですが、赤という色は熱をイメージしやすいためか、37.0℃を超えると微熱、発熱というイメージが世間に浸透してしまいました。
この誤った認識から、子どもが37.0℃以上の熱を出した時過剰に心配しすぎて、かえって子どもの体調に良くないことをしてしまう人が比較的多いということと、高熱よりももっと危険で気をつけたいのは低体温であるということです。
日本人の平均体温は36.6℃から37.2℃
まず日本人の平均体温ですが、1957年に体温研究の第一人者、東京大学の田坂定孝先生が日本人の平均体温を報告したデータがあります。その結果、正確に計測された体温では73%以上の人々が36.89℃から±0.34℃の範囲にあることがわかりました。つまり、大人でも健康な時の平均体温は36.6℃から37.2℃くらいなのです。
現在、厚労省が基準にしている平熱や発熱の数値もこの研究に基づいています。感染症法では、37.5℃以上を「発熱」、38.0℃以上を「高熱」に分類しています。また子どもの体温は成人よりも高く、65歳以上になると加齢とともに熱産生が弱まり平均体温は低めになります。
現代の日本人の平均体温は下がっている
しかし、近年「日本人の平均体温は36.9℃です」と言ってみても、ほとんどの人の平熱がそれほど高くないため信じてもらえない状態です。それを受けて、体温計の製造で有名なテルモが2008年に1,000人を対象に調査をおこないました。
その結果、大人36.14℃、子ども36.39℃となっています。こちらの結果についてテルモは正しく計測できていないためではないかという見解を出していますが、この数値の方が皆さまのイメージする平均体温に近いのではないでしょうか。小児科医100名を対象にしたリサーチでも、78.5%の医師がここ10年の間に体温の低い子どもが増えたと感じると回答しています。これは、現代人の大半が平均体温の36.9℃よりはるかに体温が低く、中には35.0℃台の人も少なくない現実となっているからなのです。
わが子の平熱を把握しましょう
現代っ子の平均体温が36.39℃だとしても、それは小学生まで含めた時の平均値です。これまでの食事や睡眠、運動習慣などの違いによって、子どもの平均体温は様々です。まずは、ご自分のお子さまの平均体温を正確に把握することからスタートしましょう。
子どもの平均体温の測り方
体温は1日の間に1℃以内程度の範囲で変化するのが普通です。ですから子どもの平熱を把握するためには、1日4回計測することを専門医は推奨しています。体温は午前4時頃が最も低く、午後から夕方にかけて高い状態になります。
理想的な時間帯は6時・11時・15時・20時頃の計4回体温を測り、時間帯ごとの平熱として覚えておくのがよいでしょう。各計測の間は3~4時間は空けて下さい。あくまで参考の目安だと考えてください。
食前や食間に検温するのが適切です。食事後や運動後または外出から戻ってきた後は体温が高くなっている可能性がありますので、30分間ほど待ってから体温を測ってください。また平熱の測定は1日だけでなく、日を置いて何回か測ってみましょう。
子どもを検温嫌いにさせないように気を付ける
この時に一番大切なことは、お子さまに「検温を嫌いにさせないこと」です。
ですから、1歳4ヵ月くらいの子どもの場合はいきなり検温するのではなく、最初はお気に入りのぬいぐるみなどを使って、看護婦さんごっこなどしながら本物の体温計でお母さんが熱を測る真似をしてみせる遊びなどで誘導しましょう。ぬいぐるみの体温を測るシーンを何回も目撃していますと、それほど抵抗なく測らせてくれるようになります。
子どもの体温を測る前に、お母さん自身が体温計を腋に挟んだ時の角度を再確認しておきましょう。体温計が上半身に対して30度くらいの角度になるのが正しい位置です。それより大きい角度になると痛みを感じる場合がありますし正確な体温も測れませんので、気をつけてあげて下さい。
発熱かな?と思ったら
普段からわが子の平熱を把握していれば、どの程度の発熱かが判断でき迷うことはありません。同じ37.5℃の熱が出たとしても、平熱が36.5℃の人の場合は平熱より1℃高いですが、平熱が37.2℃の子では0.3℃しか高くなっていないということになります。
どのお医者さまも共通しておっしゃることですが、熱の高さだけで病院に行くか、行かないかを決めるべきではありません。肝心なのは熱以外の症状や、体の状態をみて判断することです。体温の高さはひとつの目安にはなりますが、体温が高いほど重症かというと、そうは言いきれません。
少しの時間顔色が青くなって体が震えたりすると、重症の病気のような気がするかもしれませんが、何時間かたって体温が下がるとけろっとして食事もよく食べるということがあります。乳幼児は回りの環境温度が高いとすぐに体温も高くなる傾向があります。ですから少し体温が高いと思ったら、薄着にさせてみると体温が落ち着いてきて、きげんも良くなることがあります。
元気そうなら、薬で熱を下げないで!
子どもの病気の多くは、かぜウイルスの感染によります。そのウイルスは呼吸器粘膜などの組織を侵しますから、長く続けば続くほど病気はどんどん重くなっていきます。
しかし幸いなことに、かぜウイルスの感染を受けると多くの場合は発熱が起こります。発熱は病気を治すための体の自然治癒反応です。体温が高いとウイルスは繁殖できなくなります。
また、白血球の機能が促進されウイルスと戦えば戦うほど、免疫応答というシステムの働きが促進され、免疫機能が高まります。
ですから、発熱が軽度で、子どもがほとんど苦痛を訴えない場合には解熱剤の必要はありません。薬で熱を下げてしまいますと、体内にはウイルスがいつまでも残り繁殖を続けます。薬の効果が切れればまた発熱をくり返し、長引いているうちに呼吸器などの粘膜はどんどんダメージを受け、肺炎などの重篤な病気に移行してしまう危険もあります。熱自体が体や脳に危険をおよぼす目安は41℃以上です。ですから熱以外に心配な身体症状が出ていなければ39℃くらいの熱はあまり気にしなくても大丈夫でしょう。
熱よりも気を付けるべき身体症状
体温がそれほど高くなくても、「ふだんとなんだか様子が違う?」と感じる時は、注意深く様子を見る必要があります。次のような場合は熱が高くなくても病院を受診するべきですので参考にしてください。
- 顔色が悪く、苦しそうにしているとき
- 元気がなく、ぐったりしているとき
- 38.0℃以上の熱があり、頭痛を訴えたり、吐いたりなどの症状があるとき
- 意識がもうろうとしているとき
- 苦しそうに呼吸をしているとき
- 強い腹痛をうったえるとき
- ひきつけを起こしたとき
また38.0℃程度でも、まったく前触れなくいきなり熱が上がった時にはインフルエンザの可能性もありますから受診しておくのがよいでしょう。
夜間の発熱時の対応について
夜間の発熱の場合は、呼びかけてもまったく反応しないなどの意識障害やひきつけ、目の焦点が合わない、意味不明の言葉を連続して発する、嘔吐をくり返す、呼吸がおかしく肩で激しく息をしているなどの症状が見られれば救急車を呼びましょう。そのような症状が見られず、意識もしっかりしているようでしたら翌朝の受診で大丈夫です。
自家用車で夜間救急を訪れても何時間も待たされますし、免疫力が弱っているところに「子どもが本来眠っている時間帯に連れ回す」という無理をさせては、他の外来患者さんの違う病気を貰ってしまうリスクも増えます。
危険な症状が出ていないようならば、夜は体を冷やさないようにしてゆっくり休ませ、定期的に様子をみてあげてください。突然の発熱ではなくても39.0℃以上の熱が2~3日続く場合には、子どもが元気そうでも念のために受診した方がよいでしょう。
まとめ:子どもの平熱を知って落ち着いた対応をできるようにしよう
子どもは思いもかけないタイミングで急に体調が悪くなったりしがちですが、子どもの平熱を知り正しい対応を覚えておくことで、いざという時に焦らずに対応できるようになります。
また、具合が悪くなってからの対処だけでなく、普段から子どもや自分が病気に負けない強い体つくりを心がけていきましょうね。
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