乳幼児期の生育環境が対人能力の基盤となる
先述のように「愛情・信頼」の力を育てること=愛着を形成することは、子育てにおいてもっとも重要な基盤であり、これから先のお子さまのすべての成長と学びを支える土台となります。
他者からの愛情や信頼を敏感に感じ取る力、他者に対して心からの愛情を示し全幅の信頼をゆだねる力、このような対人感受性は「個人の性格」によるものと思われがちです。もちろん遺伝による影響も少しはありますが、それだけではありません。何よりも3歳未満の生育環境こそが、お子さまの対人能力の基盤や他者に対して素直に心を開く姿勢を強固に形づくるのです。
ちっちゃいときにいっぱい愛情をもらうと、大きくなっても人と仲良くできるんだって!ママやパパの愛情が、私たちの心を育てるんだよ。だから、ハグや優しいことばがとっても大切なんだって!うん、愛情いっぱいで育ったら、きっとみんなのことも大好きになれるね♪
「人見知り」は【愛着形成】のはじまり
赤ちゃんは生後6~7ヵ月になると、他人が部屋を出ていっても平気なのに、お母さんが部屋を出ていくと泣きはじめます。または他人がいくらあやしても泣きやまないのに、お母さんが抱きかかえるとすぐに泣きやむ、という行動を示すようになります。
これは知能と社会性の正しい発達を示すものですから、喜びこそすれ「人見知りが始まってしまった」などと心配する必要はまったくありません。むしろ人見知りは、赤ちゃんがお母さんやお父さんという特定の相手に対して特別な感情を抱くようになったことを意味するのです。
小さい子どもは、愛着の対象者を「安全基地」としてとらえ、信頼できる保護者との間に十分な愛着が形成されると、保護者から少し離れたところまで一人で「探索行動」をおこないます。しかし一定の距離以上が離れるととたんに泣きだし、後追いをします。離れては戻りをくり返して、次第に一人で振り返らずに進んでいける距離を広げていきます。
ですから、「早い頃から自立心を育てたかったら、0歳から子ども部屋に一人で寝かせる」というのはかえって逆効果ともいえるのです。3歳未満のうちはたくさん抱きしめたり添い寝をしたりして愛着を強固に作ることこそが、子どもが安心して遠くまで一人で歩いていける距離を長くする方法なのです。
子どもへの愛情の伝え方
人間は生きるか死ぬかという極限状態で、無意識のうちに危害を加える相手のことを積極的に好きになろうとする傾向があります。これを「ストックホルムシンドローム」といいます。なぜ好きになるかというと、自分が相手に愛情を示すことにより、相手も自分に好意的になって生き残れる可能性が高まるから、といわれています。
「しつけ」のつもりでもつき放すと子どもの心は混乱する
実は、家庭内でも似たような現象が起こりやすいと言われています。小さな子どもは家庭でしか生きていけません。どんなに親が嫌いでも、その家から追い出されれば路頭に迷ってしまいます。このため、親が子どもに対して否定的な対応をみせると、たとえそれがしつけのつもりでつき放していたとしても、子どもは家から追い出されないように嫌いな親を一生懸命好きになろうとする、という矛盾した心理状態になります。
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兄弟が生まれる時の、上の子への接し方
たとえば第二子・第三子を考える場合などは、より一層の心づかいが必要です。自立を促そうとあえて冷たく「赤ちゃんだね」と言えば、子どもはよけいに「うん、赤ちゃんなの」と言ってくるでしょう。まるで北風と太陽です。そして「赤ちゃんになればお母さんにかまってもらえる」という意識が刷りこまれ、下の子どもが生まれた後に赤ちゃん返りを起こすのです。
上の子は常に子どもあつかいをせず、お父さん・お母さんの「仲間」として接しましょう。そして「お母さん、身体が苦しいから助けてね」と頼りにしていることを常に言葉で伝えましょう。
とはいってもまだ十分に小さいですから、実際には事細かに面倒をみてあげましょう。子どもあつかいしないというのは、子どもの自尊心をくすぐってあげるための言葉の上だけのことなのです。
子どもが甘えてきた時には、できる限り受け入れましょう。愛情豊かにしっかりと抱きしめてあげましょう。よけいな言葉はいりません。もしも何か言葉をかけるならば「かわいい」「大好きだよ」など、お子さまの自己肯定感が高まるような言葉をかけることが重要です。子どもの健やかな心の成長には、見返りを求めない親の無私無欲な愛情がたっぷりと必要なのです。
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【愛着形成】につながる具体的な取り組み
「愛着」は子どもが外界に適応するための本能的な行動や感情です。まだ非常に弱い存在である人間の子どもが自分の安全を高めるために、特別な相手との情緒的な結びつきを求めるのです。ですから、この愛着行動に対するお母さんとお父さんの反応は、子どもの人格作りに多大な影響を与えます。
ではここから、愛着づくりに効果的な取り組みをお伝えいたします。くり返し実践することで日々の習慣にしていきましょう!
1. 授乳やミルクの時は、子どもの目を見つめて穏やかな気持ちで優しく語りかける
愛情や信頼の力は、相手と目をしっかり合わせる能力から育っていきます。携帯電話やテレビを見ながら授乳をおこなうことはできるだけ避けましょう。
2.「大好きだよ」「かわいいね」という言葉を毎日たくさん伝える
ことばで愛情を伝えることはとても重要です。1日の目標回数は0歳代で100回、1歳代で50回以上、2歳代で30回以上、3歳以降も10回以上は伝えましょう。特に女の子には「かわいい」という言葉をたっぷりと言ってあげることが大切です。
3. ベビーマッサージやふれあい遊びを毎日おこなう
スキンシップも愛着づくりには非常に高い効果があります。朝起きた時や夜寝る前には抱きしめておでこや頬にキスをしましょう。
4. 人見知りを心配せず喜ぶ
子どもの中で両親への愛着が育っている証拠です。人見知りの時期こそ、不特定多数の人に出会える公園や地区センターなどへ積極的に出かけましょう。そして無理強いすることなく自然にお子さまのしたいようにさせましょう。
「知らない人を警戒すること」だけでなく、「親しい人とそうでない人の区別が明確にあらわれること」も人見知りのひとつです。お母さんから離れないようならばそれはそれでいいのです。目に見えた変化が感じられなくても、子どもの心の中ではそういう経験をくり返して、少しずつ安全基地から離れていられる距離を広げていっているのですから。
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5. 言葉がある程度わかるようになったら、子どもの要求にはすべて笑顔で答える
「ダメだよ」という時も笑顔で優しく伝えましょう。「~なかったら知らないよ」という言葉かけは「言うことをきけばお母さんに愛してもらえる、きかなかったら愛してもらえない」という認識を抱かせてしまいます。子どもが良いことをしようと悪いことをしようと関係なく、「お母さんとお父さんはいつだってあなたを深く愛しているよ」という深い信頼を育てることのほうが、何を教えるよりも先なのです。
ただし、まだ理解ができないくらい幼い時期に、望ましくない行動をやめさせたい時には極力無表情で接しましょう。ご両親の「反応がない」ということが、何かへの興味を失わせるには一番効果的なのです。何らかの感情を表現することはすべてお子さまの興味を惹きます。怒るも泣くも笑うも、お子さまにとっては「反応してくれた」という意味においては同じなのです。
子どもへの愛情に関するよくある質問
まとめ:乳幼児期の親と子の接し方が、その子のその後の人生を左右する
いかかでしたでしょうか? 乳幼児期の親子の間の愛情あふれる関係性が、子どものその後の対人関係のあり方や社会とのかかわり方を決めていくといっても過言ではないのです。
とはいえ過度に心配する必要はありません。
上述した具体的取り組みはどれも難しいことではなく、まさに愛情・愛着をもって子どもに接してあげれば普通にできることばかりです。子どもを大きな安心の気持ちで満たしてあげて、その後の探索・冒険の後押しをしてあげられるようにしましょう。
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